リスク最小化とスピード第一:クラウド時代のビジネススタイル
Aptureは、2008年夏にスタンフォード大学の計算機科学専攻のトリスタン・ハリス氏(写真上)ら、学生3人が立ち上げたベンチャー企業ですが、テクノロジーとユーザーインタフェースが優秀であることが評価され、欧米の主要メディアに採用されるようになりました。3月には、About.com創業者のピーター・ホーラン氏(写真下)が役員に加わりました。ビッグネームが参加したということは、可能性の大きさを示すものです。似たサービスは珍しくないのですが、Aptureは一番邪魔にならず、スムーズです。検索プロファイルをカスタマイズすることもできます。ビジネスモデルは明快で、基本的に広告(無料)と販売(従量制による有償)です。有料の場合は、サイト側で広告を販売することもできます。
クラウド・コンピューティング時代のITサービスは、Aptureのような形が基本形です。開発者(たいていはベンチャー企業)は、技術とビジネスモデルの開発に専念し、営業や宣伝広告費用をかけず、直接ユーザーに試用してもらってフィードバックをもらい、ユーザーが順調に増えてから収益モデルを動かす段階に入ります。「フリーミアム」を当たり前のように使うわけです。無料ユーザー>有料ユーザー>ビジネスパートナー、という形でピラミッドを高めていくスタイルなので、富士の裾野のような無数のユーザーを無償で獲得しないとビジネスモデルが機能しません。無料中心の期間は、半年から2年、時にそれ以上にもなります。また料金は従量制で、利用が少ないと無料かそれに近い水準です。開発者は販売努力よりサイト、個人に使ってもらう努力を優先します。
開発者にとっては、過大な開発費や宣伝広告費、営業費用をかけることで失敗のコストを大きくすることがなくなります。技術やサービス、ビジネスモデルの柔軟な組み換えを可能にする、非常に合理的なやり方です。同じようなツール(競合)は1ダースほど現れますが、勝ち目がないと思えば早めに退出し、適当な規模になれば大手に売却、さらに期待が膨らめばIPOも可能になります。コアとなる技術はシンプルでスケーラブルでないと、成長に対応できません。TwitterやFacebookが生き残れたのは、ネットワーク管理が優秀だったから、とも言えます。
メディアに頼らず自分で試し、判断する
このやり方の唯一の問題点は、一般的な販促活動らしきものが行われないので、代理店経由の広告が欲しい(つまりメジャーな)メディアには軽視あるいは無視され、一般消費者はおろかプロにさえ知られる機会が少なくなることです。広告はおろか、営業や技術担当者が訪問したりする「儀式」も過去のものとなり、金をかけているかどうかで企業の信用度を量る旧態なユーザーは相手にされません。これは日本の常識ではありません。そのためにTwitterやFacebookにしても(あるいはGoogleにしても)、メディアの話題になって日本に「登場」するのに2年以上はかかりました。しかし、相手の方が日本の商慣習に合わせてくれることはありません。難しい市場は素通りするのがスピード重視のネットビジネスの基本だからです。日本のほうがこのパラダイムに適応しないと、ビジネス全体のWeb化が進行するほどに、パフォーマンスの差は拡大していくでしょう。コンテンツビジネスにおいて、この格差が致命的であることは明らかです。
新世代のクラウドサービスは、オープンソース・ソフトウェアとともに、われわれのように資源の乏しい企業には有難いもので、EBook2.0 Forumもそれを前提にして生まれました。これからも新世代のツールを活用して、最先端に追いつくよう努力したいと考えております。 (鎌田、2011-05-08)
[…] ポップアップ式検索ユーティリティ Apture Apture すごく使いやすかった。機能的に十分。確かに滞在時間を伸ばす効果が期待できそう。 (tags: Web サービス) […]