本というものは、著者/読者が「自我」を映す鏡なのではないかと思える。とくに著者はそうだ。読者は変化する「世界」を知るために本を読むが、著者は読者を通して自分を知ることになるからだ。著者にとって読者は不可欠な存在だ。というより、著者/読者は最初からひとつなのだ。互いに遠い存在ではなく、社会に生きる人間の2つの側面で不可分ともいえる。読むことと書くこと、考えることと表現すること、学ぶことと教えること…などが一体であるように。 ※本稿は来月発刊予定『Kindle以後10年(Book2)』の草稿です。 ... [続きを読む...]
Forum“Version 2″へ向けて (2)「平成」に何が起きたか?
1970年代、オフィスにコンピュータが登場した。文字と文字組は数値化され、1980年代にはパソコンやワープロが「活字文書」を身近にした。1990年代には、通信もデジタル化され、メディアに浸透していった。あらゆる情報がデジタルで作成・保存・共有されるようになった。そして21世紀を前にした最後の10年にWebが発明され、5年あまりで人々にとっての「世界」は一変してしまった!? ... [続きを読む...]
アマゾンは20年で出版の何を変えたのか?
Wall Street Journal (WSJ)紙で出版を担当するジェフリー・トラクテンバーグ記者が「業界勢力図を塗り替えるアマゾンの書籍出版」を総括した記事 (01/16)を書いた。日本語版 (01/17)にも掲載されたのでぜひ一読いただきたい。出版者としてのアマゾンを「無名の本を必読書に押上げることのできる比類ないショーウィンドー」という紹介だ。 ... [続きを読む...]
FBF2015 ビジネスクラブ日程
10月13日からフランクフルトに滞在し、構成/配置を大胆に模様替えしたブックフェア2015のレポートをお伝えする予定です。まず筆者が活動の拠点とする Business Clubについてご案内しておきましょう。これは昨年から始まったものですが、フランクフルトらしい国際的なイニシアティブです。 ... [続きを読む...]
一瞬で消えた日本的流通の「結界」
E-Book 2.0 Magazineは、最新号記事へのアクセスがサーバの能力を超えて集中したため、8月28日深夜より不通状態になっております。復旧を急いでおりますが、とりあえず直接の原因になりました記事を公開いたしますので、こちらをお読みいただければ幸いです。ご不自由をおかけしたことをお詫びいたします。 ... [続きを読む...]
プロジェクト指向出版:(5)なぜ、いまなのか
情報コモディティの生産と流通としての出版ビジネスは、オンラインが圧倒的に有利であり、アマゾンの優位はそこにある。しかし書店に引き籠っていてはグーテンベルク出版の最後の日を待つばかりだ。出版の主導性は、コモディティを超える社会的価値としての「大きな目標」を訴求し、実現する能力に懸かっている。 ... [続きを読む...]
プロジェクト指向出版:(4)価値からの再出発
サービスに使われることなく、使いこなすには、出版の目的を明確にし、達成しなければならない、というわけで本題に入る前にサービスについてしつこく述べてきたわけだが、理解いただけたかどうか。しかし出版が何のために存在してきたかを、いまほど痛切に感じられる時はない。目的さえ明確であれば、プロセスはコントロールできる。 ... [続きを読む...]
プロジェクト指向出版:(3)サービス化を超えて
デジタル(=サービス化)によって出版のエコシステムは一変しようとしている。出版に限ったことではないが、この転換には非常な痛みが伴う。出版における伝統的な仕事の価値観に多少とも浸し、そして様々な分野でのサービス化の現場を目にしてきた身としてはつらいものがあるが、出版を未来につなげていくために可能なことを考えるしかない。 ... [続きを読む...]
プロジェクト指向出版:(2)サービスのデジタル化の進展
「サービス」の説明をとばしてプロジェクト/プロセスの話をしたいと思ったが、出版におけるサービスの性格はとても複雑で、しかもデジタルによってサービスが変容したことが出版の変化をもたらしているので、そこの理解が共有できないとプロジェクトが重要といったところで具体論には進めない。そこでしばし寄り道するのをお許しいただきたい。 ... [続きを読む...]
プロジェクト指向出版:(1)コンテンツからサービスへ?
出版社にとって「版」は打ち出の小槌であり、それがプロダクトとしての本を生み出していた。しかし、いま版は確かな実体を失い、コンテンツもあまりに頼りない。多様な価値を読み取り、コントロールすることで出版の姿を変えている「サービス」は、しかし出版の中心主体にはなり得ないだろう。では、21世紀に本をつくりだす力は何なのだろうか。 ... [続きを読む...]