筆者は近年、中国やインドの音と映像記録から見える「人間の文化・社会」をテーマに、「全体」として「体験」的に観察する遊びにはまっている。「良き書物を読むことは、過去の最も優れた人達と会話をかわすようなものである」と、かのデカルトは『方法序説』で言っている。筆者は、本ならぬ、マルチ×メディア体験で「脳内オルギー状態」を発生させて夏を乗り切ろうというものだ。長年、文字で記述された(静的な分析や印象)をその通りのものとして錯覚してきた反省から、世界を映画や音楽、料理、文化などの(なるべく非言語的な)素材を通して体験することで、何かを発見しようということでもある。これは、Webによって、歴史上かつてなく安価な娯楽になっている。人様と共有できるようなものであれば幸い。 ※文中テキストリンクはWikipediaや説明サイトに、図写真はストアにリンクします。 ... [続きを読む]
本と出版ビジネス -Expanding Books-
POD、ソーシャル、マーケティング、書店、出版、インディーズ
中国はどうやって「現代化」に成功したか?
人類の進化(学習過程と社会的行動)を解明する社会的学習理論は、言語による社会的学習能力の獲得の成果について多くを語っている。しかし、重要なことは、言語能力によって、人間が社会的・進化論的ジレンマを抱えたことのほうだ、と進化の統計モデルを考案した英国レディング大学のマーク・パーゲル博士(進化生物学、王立協会フェロー)は、TEDの講演で述べている。では米中貿易戦争のような事態は、どのように理解すべきだろうか。中国はいわゆる「中進国の罠」を大国化戦略で抜け、日本が失敗し、米国が直面している「大国の罠」を経験するだろうが、ここでも「社会的言語」を機能させることが出来るかどうかが鍵となるように思われる。 ... [続きを読む]
「読者との直の関係」を選ぶNYT
アップルが先月発表した 「Apple News+」に2つの有力紙(New York Times と Washington Post)が「不参加」を表明した。NYTは「読者との直の関係」を重視、WPは「意味をなさない」とした。それぞれ独自のデジタル戦略と取組んできた両社にとって「メタデータ」が使えない情報発信は無意味だと見られている。 ... [続きを読む]
出版最後のアナログ問題 (1):制作
アマゾンCreatespaceは、Kindleエコシステムにおいて戦略的に重要な部分を受け持っていた。それは、デジタル中心のプロセスと市場においても、印刷本の提供が持続可能であることを保証するものだ。読者のニーズをよく理解していたアマゾンは、印刷本の制作システムの現代化に本気で取組んで、ほぼ完成したと思われる。 ... [続きを読む]
Web時代の出版と社会
本というものは、著者/読者が「自我」を映す鏡なのではないかと思える。とくに著者はそうだ。読者は変化する「世界」を知るために本を読むが、著者は読者を通して自分を知ることになるからだ。著者にとって読者は不可欠な存在だ。というより、著者/読者は最初からひとつなのだ。互いに遠い存在ではなく、社会に生きる人間の2つの側面で不可分ともいえる。読むことと書くこと、考えることと表現すること、学ぶことと教えること…などが一体であるように。 ※本稿は来月発刊予定『Kindle以後10年(Book2)』の草稿です。 ... [続きを読む]
Forum“Version 2″へ向けて (2)「平成」に何が起きたか?
1970年代、オフィスにコンピュータが登場した。文字と文字組は数値化され、1980年代にはパソコンやワープロが「活字文書」を身近にした。1990年代には、通信もデジタル化され、メディアに浸透していった。あらゆる情報がデジタルで作成・保存・共有されるようになった。そして21世紀を前にした最後の10年にWebが発明され、5年あまりで人々にとっての「世界」は一変してしまった!? ... [続きを読む]
Forum “Version 2″へ向けて (1)
いま出版は、誰が見ても病的な状態にある。出版だけではない。かつての「先進工業国」に共通した現象でもあるが、現在と将来の「生活」に不安を持ち、それまでに得た「自信」を失い、つまりは「意味=価値」が揺らいでいる。出版は社会を見つめる視点を提供し、病気を治す知恵をもたらす、生きる力を取り戻すものでもあるはずだが、その医者が病気なのだ。 ... [続きを読む]
アマゾンは20年で出版の何を変えたのか?
Wall Street Journal (WSJ)紙で出版を担当するジェフリー・トラクテンバーグ記者が「業界勢力図を塗り替えるアマゾンの書籍出版」を総括した記事 (01/16)を書いた。日本語版 (01/17)にも掲載されたのでぜひ一読いただきたい。出版者としてのアマゾンを「無名の本を必読書に押上げることのできる比類ないショーウィンドー」という紹介だ。 ... [続きを読む]
FBF2015 ビジネスクラブ日程
10月13日からフランクフルトに滞在し、構成/配置を大胆に模様替えしたブックフェア2015のレポートをお伝えする予定です。まず筆者が活動の拠点とする Business Clubについてご案内しておきましょう。これは昨年から始まったものですが、フランクフルトらしい国際的なイニシアティブです。 ... [続きを読む]
プロジェクト指向出版:(5)なぜ、いまなのか
情報コモディティの生産と流通としての出版ビジネスは、オンラインが圧倒的に有利であり、アマゾンの優位はそこにある。しかし書店に引き籠っていてはグーテンベルク出版の最後の日を待つばかりだ。出版の主導性は、コモディティを超える社会的価値としての「大きな目標」を訴求し、実現する能力に懸かっている。 ... [続きを読む]