著作権に関する議論は、どこか胡散臭い。5Wのコンテクストが外され、ただ「拡張と延長」そして「取締強化」にだけ誘導されているのだ。仮面を外した実際の顔を知ることが、誰にとっても重要になってきた。そこで、まず米国の有力な技術系ブログメディアTechdirtのマイク・マスニック編集長の了解を得て、最近米国での著作権改革について書いた論文を翻訳・掲載する。解説は別に書きたいと思うが、まずは著作権がいかに(国際的に)誤解・曲解されているかを知っていただければ幸いである。(鎌田) ... [続きを読む]
IPR/Copyright
出版デジタル機構がモンスターになる日
出版デジタル機構が、電子出版の取次「大手」ビットウェイを買収したことについて、岸 博幸教授(慶應大学・大学院メディアデザイン研究科)が「出版デジタル機構の電子書籍取次買収は最悪の愚策」と断じている。(1)民業圧迫、(2)モラルハザード、という明快な根拠は十分すぎる説得力があり、その通りだと思う。関係者も沈黙するほかないだろう。 しかしこうすることが暗黙の既定方針だった可能性はかなり高い。でなければ、疑問と批判に答え、経緯を説明していただきたい。このままでは「1兆円」が永久に遠ざかってしまう。 ... [続きを読む]
出版の「著作隣接権」を考える(1):権利と利権
カナダの作家団体が「権利章典」で印税50%要求
カナダ著作家協会(The Writers Union of Canada=TWUC)は、デジタル時代における基本的な要求を12項目の「デジタル時代の著作家の権利章典」(PDF)としてまとめ、出版社に配布した。これまでのところ回答やコメントはないという。カナダではエージェントを利用する作家は2割ほどしかおらず、TWUCはこの「権利」を出版契約書に盛り込もうとしているようだ。論議を呼びそうなのは「印税50%」というところだろう。 ... [続きを読む]
イノベーションは終わるのか
E-Book市場でのアップルの影は薄いので、Magazineで取上げはしなかったが、やはりスティーブ・ジョブズCEOの引退について何も語らないわけにはいかない。「魔術的」と評されるコミュニケーションの達人、「イノベーションとはノーを千回言うこと」と喝破する完璧主義者、優秀なスタッフに100%以上の仕事をさせるカリスマ、巨大なリスクを独りで引き受ける胆力、大衆(メディア)に背を向ける勇気…。あらゆる点で彼の後継者が登場する可能性は限りなくゼロに近いからだ。一つの時代が終わった。次の時代は退屈な、ことによると停滞的な時代となるかもしれない。 ... [続きを読む]
DRMは何のためにあるか
来る5月4日、「国際反DRMデー」(International Day Against DRM) というイベントが計画されている。主催者は大手メディア企業やIT企業によるDRMに反対する DefectiveByDesign というグループで、今年で3回目になるが、コンピュータ・ユーザーの自由を促進するための市民団体として有名な Free Software Foundation (FSF)のキャンペーンだ。他方で「知的所有権保護」は米国や日本政府が掲げる錦の御旗となっており、DRMをめぐる問題は、一見すると宗教論争のようにも見えてくる。 だが、どうもそうではなさそうだ。実態を知るほど、DRMのRはRightsでなくRestrictionだ、という批判論のほうに理があると思えてくる。 ... [続きを読む]
資料:E-Bookユーザーの「権利章典」
ここにご紹介するのは、サンフランシスコの北、サンラファエル市の公立図書館の副館長で、コンサルタントとしても活躍しているセーラ・ホートン-ジャン氏が書いた、「E-Book ユーザーの権利章典」という文章だ。大手出版社のハーパーコリンズ社と図書館との対立の背景には、E-Book において本とはなじみの薄い「ライセンス」販売という形態がとられていることがある。出版社は無制限に貸出されて売れなくなる悪夢を怖れ、図書館はE-Book を扱えなくなることで公共的使命を果たせなくなることを怖れる。彼女はここでE-Book についても印刷本と同様の扱いを認めるべきだと主張している。この文章は米国で引用されることが多いので参考のために訳出・掲載したものである。彼女の主張は、ブログ等で読むことが出来るし、この権利章典の解説もPodCast で聞くことが出来る。 ... [続きを読む]
著者 vs. 出版社 in US、勝ったのはどっち?
E-Bookの著作権料率は、簡単に決着しそうもない問題だが、一般的には、印刷本と比べて制作と在庫管理のない分、著作者の取り分が増えることが期待されている。ところが、米国のAuthors Guild (AG)が調べたケースでは、むしろ出版社の取り分が増えていることが判明した(2/3)。E-Bookの料率は出版社の売上の25%。ハードカバーの著作権料は、一般的に定価の15%だが、新刊本について実際に計算してみたところでは、作家側の条件は印刷本に比べて悪化している、とAGは結論づけている。 ... [続きを読む]
流動化する“E-Book以後”の出版契約
この1年の間に、米国では出版市場におけるE-Bookの重みは増したが、同時にビジネスモデルや契約モデルも大きく変動した。出版社にとっては、変化という以上に、明日の市場環境が読めないこと頭を悩ませている。著者との出版契約は日々の問題だが、どうやら変化を前提とし、柔軟性を持った期間限定・バスケット型契約で当面を乗り切ろうというものが主流になりつつあるようだ。(9月23日創刊のEB Magazine用予稿。) ... [続きを読む]
「出版物の利活用推進」懇談会って一体?
総務省、文部科学省および経済産業省は3月10日、連名で「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」の開催を発表した。第1回は3月17日、公開(傍聴制)で行われ、記者会見も開催される予定。といって、すでに行われている「利活用」を行政としてどうしたいのかは、発表からはまったくうかがえない。こういう時には何か微妙なものが隠されているものだ。 ... [続きを読む]