敵を知り己を知れば…、ということで、まずアマゾンとは何であるかを考えてみたい。筆者もこの数年頭を絞って考えてきたのだが、この会社が何をやっているかは誰もが知っていても、どういった存在であるかということは知られていないと思う。この会社はサプライチェーンのすべてにフォーカスし、それを組み直すことを価値の源泉としているのだが、それを「消費者の視点」でやることにユニークさがある。だからつねに「破壊的イノベーション」を志向することになる。立場によっては、良くも悪くも、ということだが。 ... [続きを読む]
本と出版ビジネス -Expanding Books-
POD、ソーシャル、マーケティング、書店、出版、インディーズ
印刷書籍の市場崩壊はあるか
米国の大手出版社を中心に、昨年の印刷本の下落とE-Bookの上昇分がほぼ見合ったことから、再び「カニバリズム」論が蒸し返されてきた。全体としての売上が維持され、利益率が向上したことで悲観論は強くないし、むしろ楽観論が強いのだが、フォレスター・リサーチのジェイムズ・マッキヴェイ副社長は、かつて音楽市場で起きたように、印刷本が近い将来(2012-13)、急激に落ち込むと警告している。筆者はまったく同意できないのだが、真剣に考えてみるべきテーマではある。 ... [続きを読む]
東北を遥か離れて:電子化事業への5つの疑問
大震災から1周年。東北に少なからず縁のある者として、その復興には強い関心がある。そして出版のデジタル化にはこの3年ほど、それなりに取り組んできた。しかしこの2つを結びつけた今回の「緊急」事業には、残念ながら筆者の理解と想像力を超えたところがある。オープンに議論が交わされた形跡を発見できないのも気になる。どなたか、以下の疑問を氷解させ、愚問であったことを教えていただけることを期待したい。 ... [続きを読む]
E-Book再考 (9):読者/顧客/消費者の変貌
E-Book再考(8):流通システム再構築の必要
E-Book再考(7):自主出版の意味とは?
自主出版という側面から出版社不要論を紹介した前回の記事には、予想通り様々なコメントをいただいたが、とくに「編集」と「読者」について指摘したものがあった。有難い。これらについては次回以降に考えさせていただくとして、まず自主出版への誤解と偏見を解いておきたい。自主出版者は、出版社を咎めてはいない。ただ出版社に期待するのは止めようと考えているだけだ。なぜそうなのかも知っている。既存の流通の仕組みが本を出版したい者に著しく不利になっているのがその理由だ。 ... [続きを読む]
E-Book再考(6):出版社は何のためにあるのか
E-Book再考(5):本はコモディティか?
ジョブズの遺産とiBooks新戦略をめぐる7つの問い
iBooks Authorを中心としたアップルのiBooks 2戦略は、2つの面を持っている。今日の教育に不可欠なマルチメディア・コンテンツを作り、出版する武器を万人に開放するという啓蒙的側面と、出版はiBookstoreを通じなければならない(iPadを使え)という専制的側面だ。「啓蒙的専制君主」としての故スティーブ・ジョブズの面目躍如とした遺産なのだが、これを受け容れるかどうか、われわれも選択を迫られている。ここでは問題を7つにまとめ、筆者の答を示す。[全文はE-Book2.0 Magazineにて公開中です] ... [続きを読む]
E-Book再考(4):出版社は価格決定権をどう使った
E-Bookビジネスの最大の逆説は、アマゾンの独占を怖れ、嫌悪する大手出版社が、市場においては(その意図に反して)アマゾンによる独占を助ける行動をとり、それによってアマゾンへの依存度を高めているということだろう。初めて小売価格決定権を手にした大手出版社は、値上げによって消費者を敵に回すという最悪の状況に陥ってしまった。日本でも多くの読者を持つ著名なジャーナリストのダン・ギルモア氏は、衝動買いを止め、図書館と古書店を見直すに至った経緯を英紙Guardianに綴っている。 ... [続きを読む]