落語の口演をもとにした口述本は、明治初期の人気コンテンツというだけでなく、「言文一致」の母体ともなった。口述本に親しんだ読者大衆が市場としていなければ、翻訳だけから新しい文字言語が生まれるはずはない。「明治二十年」は、まさに活字作家の鼻祖たる坪内逍遥、二葉亭 四迷らによって近代文学の礎が築かれた時期と重なる。とすると…。小生の真っ向勝負を受けた小林さんの漫談は、さすがに重要な点を衝いている。(編集子解題) ... [続きを読む]
江戸の出版文化
「書物における明治二十年問題」をめぐって/鎌田
「書物における明治二十年問題」は、私たちが「紙かデジタルか」などという不毛な近視眼的見方を抜け出し、書物の歴史をふまえた創造的な議論に進んでいく重要な手がかりを与えている。本フォーラムでは、これを出発点として前進すべく、橋口侯之介さんと小林龍生さんと鎌田による「鼎談」を企画した。これがさらに分岐を生み、リンクを広げて新しい「書物」の実験にもなることを期待している。まずは鎌田が受け止めたことをまとめておく。(鎌田) ... [続きを読む]
書物における明治二十年問題/橋口侯之介
この貴重な論考は、ポスト・グーテンベルクを考える新しい企画の出発点として、著者の橋口侯之介氏に転載を快諾いただいた。千年の歴史を持ち、近世に繁栄を極めた和本のエコシステムはこの年を境に壊滅に向かい、金属活字印刷による近代出版業に道を譲った。その「近代」の象徴さえもデジタルによって相対化されようとしている現在、ひとつの文明の終わりを画した「明治二十年」の意味は、いまこそ振り返るべきだろう。そこで何が起き、何が失われたのか、ポスト・グーテンベルク問題との接点は何か? まずは予断をもたずにご一読いただきたい。(編集子解題) ... [続きを読む]