米国書籍販売者協会(ABA)はこのほどオンデマンドブックス社(ODB)との間でオンデマンド印刷・製本機Espresso Book Machine (EBM)に関するマーケティング提携を行うことを発表した。ABAは加盟書店に販売するほか、出版社から許諾を得る上での協力を行うという。「品切れなし。書店で買えるPoD」は一定のインパクトが期待される。ライバルが存在しないことも災いしてか、伸び悩んできたEBMの普及につながるかどうかが注目される。 ... [続きを読む]
Industries
デジタル革命第2幕:印刷と流通の統合
ハーパーコリンズ社と北米最大の印刷会社 RRダネリー(RR Donnelley)は5月12日、世界規模でのサプライチェーンに関する提携を発表した。RRDは今年11月以降、ヴァージニア州ハリソンバーグのセンターでHCの新刊本のフルフィルメント業務一切を代行する。また12年7月以降は、HC傘下のゾンダーヴァン社の全刊行本に関する業務を受託する。RRDはまた世界規模でのオンデマンド印刷(PoD)サービスをHCに提供し、HCが出版権を保持する地域において書籍の配本を行う。大手出版社のこうした業務委託は初めてで、出版流通再編につながる可能性が大きい。サプライチェーンのデジタル化は新段階に入った。 ... [続きを読む]
iPadが創造した世界とビジネス
アップルのアプリ審査指針が、アマゾンのようなE-Bookストアをも射程に入れているとすると、時々問題になる検閲どころではなく、形成途上のE-Bookのエコシステムに重大な影響を与える。iPhoneやiPadを中心とするiOSデバイスを利用するコンテンツ/サービス・ビジネスにとっての唯一の決済プラットフォームであることを宣言したことになるからだ。頭をアツくする前に、考えてみていただきたい。iPadとは何か? ... [続きを読む]
Kindleが、Nook…が、iPhone/iPadから消える?
iPadが、ただのガジェットでもコンピュータでもなく、サイバースペース上のApp Storeのためのメディア・デバイスであることは、意外と見落とされていた。人々に意識されないまま、短期間でE-Bookビジネスの主要なデバイスになったのだが、アップルは7月以降、その決済プラットフォーム(IAP)を介さないアプリを追放する方針を表明した。適用の方法と範囲によっては、サードパーティのオンラインブックストアはiOSデバイスから消え、日本でのコンテンツビジネスにも大きな波乱を呼ぶことになる。その可能性を含めて、3回に分けで考えてみたい。(1/3回) ... [続きを読む]
カフェ・ネットとネット・カフェの間
米国スターバックスが今週、Starbucks Digital Networkのサービスを開始し、音楽、映画、ニュース、E-Bookを、約6800店舗の無線LAN経由で提供する。Yahooと提携してポータルサイトを運営するもので、コンテンツプロバイダーとしては、Bookish Reading Club、Foursquare、GOOD, LinkedIn、New Word City、The Weather Channelなどが参加している。WSJ.comなど提携する有料サイトのを無料で閲覧できるようにした。 ... [続きを読む]
E-Bookが広告媒体になる!?
本と広告は、長い間(PR書籍を除いて)ほとんど接点がなかった。雑誌をやっていない出版社は、自社広告以外、広告の世界とは付き合いがないだろう。しかし、E-Bookは本と広告を結びつけることを技術的に可能とした。米国では特許申請が相次ぎ、まもなく実証実験が行われる。賛否両論はあると思うが、E-Bookが印刷本と同水準の価格では受け容れられず低落傾向にある以上、いずれ出版は広告との結びつきを強めることになる。その必然性は強い。(写真はLinely PlanetのiPad版シティガイド) ... [続きを読む]
EB2ノート(15):版データは誰のものか?
電子書籍は「ブーム」にまでなったが、端末表示用の電子データを流すだけでは、流通による出版の再編という意味しか持たない。版には様々な付加価値を組込むことができるが、これまで日本において版を制作・管理してきたのは印刷会社である。印刷会社には、印刷・製本から電子的な「版」をベースとしたビジネスに移行するチャンスが開かれていると考えるべきだろう。それは生産的視点からの出版の再創造という意味を持っているように思われる。 ... [続きを読む]
EB2ノート(14):「抵抗勢力」とは何か?
遅くなったが、8月10日に開催した第5回研究講座「「“電子書籍元年”の中間総括-印刷業界の視点」のまとめと感想を。ものづくりとしての出版の実務に足を置きながら広く活字=出版文化をみておられる中西秀彦氏をゲストに迎えたことで、現時点での「電子書籍」と新しいメディアとして創造されるべきE-Book (2)との違い、移行の方向性が見えてきたように思う。それに中西氏の「抵抗勢力」論の真意も。 ... [続きを読む]
印刷業と“電子書籍元年”(3):ビジネスモデル
これまでどちらかというと寡黙で受動的なイメージの強かった印刷業界のイニシアティブが目立つようになってきた。大日本印刷と凸版印刷という世界的大企業がここまで積極的に動く以上、本のデジタル化の先にある出版の再編をも射程に入れた戦略的動きであることは間違いない。しかし、大凸ほどの規模でなくても、E-Bookビジネスにコミットする動機と能力を持つことは可能だし、家電や通信など周辺業界よりは実質的リーダーシップを取りうるだろう。 ... [続きを読む]
印刷業と“電子書籍元年”(2):付加価値の可能性
近代的な出版は「版」に関する技術から生まれた。それはE-Bookについても同じである。印刷本における品質と機能を移行させた上で、本のコンテンツ価値を最大化するというロードマップを考えた場合、現状はまだ入口付近にいるにすぎず、機能・個性・品質が揃わないとE-Bookが独立した価値を主張できない。そこで付加価値の可能性を考えてみたい。 ... [続きを読む]