さきに『ぼくらの時代の本』を上梓されたクレイグ・モド氏にインタビューさせていただく機会を得た。話の中身をご紹介する前に、この多面的な魅力を持つ「本とその出版」を筆者がどう読んだかを先に述べておくべきだと考えた。本はつくられ、出版され、のちのち読まれることで意味を持ち続ける。この転換期に、日本でこういう本が出たことをよろこびたい。 ... [続きを読む...]
Beyond Books
プレ・グーテンベルクの復興(3):デジタルによる統合へ
「メディアの危機」の連載で述べたように、デジタル技術は知識コミュニケーションの社会的基盤としての出版を再構成しようとしている。それはもともと物理的な本を前提とし、読むことを中心に成立していたG以前の出版エコシステムのほうに親和性が高い。脱Gパラダイムは、「ゼロ」から出発するよりは、まず非Gの古典世界の復興として着手すべきだ。それには歴史的必然性がある。(鎌田) ... [続きを読む...]
プレ・グーテンベルクの復興(2):読書環境
紙の上に書かれたものに価値があるのは、それを読むことを通じて知識や表現の持つ意味が伝わる場合だ。グーテンベルク以前の書物は、それを扱う様々な文化的行為によって、今日では容易に想像できないほどの力を持ち得ていた。モノとしての本が相対化されることで、読むことを中心とした新しい環境が見えてきたが、それは偉大な伝統の復活の可能性を告げている。(鎌田博樹) ... [続きを読む...]
プレ・グーテンベルクの復興(1):はじめに
「グーテンベルク以前の書物のための仮想読書環境の構築」という筆者のアイデアが、今年のフランクフルト・ブックフェアの Digital Publishing Creative Idea Contestで表彰された(→リリース)。本サイトでも取り上げてきた「和本プロジェクト」(Project Beyond G3)の最初の対外的成果である。発表内容について連載でご紹介してみたい。(鎌田博樹) ... [続きを読む...]
デジタル出版アイデア授賞式プレゼン資料
「和本論」を下敷きにした Project Beyond G3 (Gravity of Gutenberg Galaxy)のコンセプトを、フランクフルト・ブックフェアとフランクフルト大学の共催による「デジタル出版創造的アイデア・コンテスト」に提案したところ、意外にも最優秀3件の中に選ばれた(→リリース)。とりあえず、10月10日の授賞式当日に使用したプレゼン資料を掲載する。 ... [続きを読む...]
和本論からE-Bookへ (1):書物としての絵巻
橋口和本論(と呼ばせていただく)から受けた重要なヒントは多く、簡単には整理できない。こういうときは整理を後回しにして、記憶が薄れないうちにインスピレーションをそのまま書きとめ、浮かんでくるアイデアをランダムに書き綴っていくしかない。和本の世界はデジタルと親和性があり、その復興が出版の21世紀を創造的なものにするという確信は、今年最大の収穫であった。和本は世界的な文化遺産にとどまらず、出版とテクノロジーのあるべき方向を示している。(写真は奈良絵本『ゑほしおりさうし(烏帽子折草紙)』) ... [続きを読む...]
アマゾン9月6日新製品発表イベント
9月6日(日本時間で金曜早朝にかけて)行われたアマゾンの新製品イベントは一見の価値がある。ベゾスCEOのプレゼンには、ジョブスのようなカリスマ性は皆無だが、理詰めの迫力とでも言うべきものがある。英語は日本人にも分かりやすいもの。EBook 2.0 Magazineに、内容の紹介と評価は順次載せているが、バランスよく全体を理解するには、やはり一度この1時間あまりのビデオを見ていただいたほうがよいと思う。とくに日本ではほとんど理解されているとは思えない「Kindleはサービスである」ということの意味を知るために。 ... [続きを読む...]
コンテンツとテクノロジー:(6)『日本語組版処理の要件』と小林 敏さん、小野澤 賢三さん(2)
デジタルはアナログ(実世界)を経済的に模倣し、再現するものだ。実世界には問題を理解する達人とそれに準じた職人がおり、解決を与える。他方でデジタルは、問題が言語(数学的形式)として与えられさえすれば、忠実に実行する。場に応じる達人の智の言語化は難しい。中途半端なら手間が増え、完璧に噛み合えば職人の仕事はなくなる。アナログは深め、デジタルは追いかける。終わりがないのがいい。(編集子解題) ... [続きを読む...]
オープン・パブリッシングのビジョン:(番外) 知の銀河系を開放する
オープン・パブリッシングは、従来の本の電子化をはるかに超えた、知識情報コミュニケーションにおける革命に対応するコンセプトだ。この革命はとうに進行している。ビジネスと社会の対応が遅れているだけだ。グーテンベルクの印刷術は、間もなく世界に伝えられたが、イスラム世界や中国・インドなどの古代文明の地はこれを無視し、日本も同様だった。遅れていた西欧、新興国のアメリカに抜かれた大きな理由だ。 ... [続きを読む...]
コンテンツとテクノロジーの対話:(5)『日本語組版処理の要件』と小林 敏さん、小野澤 賢三さん(1)
要求が定義され、機能の仕様が合意され、標準が出来る。その後に実装製品が出てくるのだが、ソフトウェア標準の開発者がまず覚悟しなければならないのは、標準化に対価は得られず、よい標準であれるほど、その機能はデフォルトとなり、早晩商品価値を失うということだ。人類に火をもたらしたプロメーテウスの運命。EPUB 3の日本語組版をわれわれはどう生かすべきなのか。海外に出て行くか、日本に入ってくるのを待つか。時間はそうない。(編集子解題) ... [続きを読む...]