Kindle for the Webの裏側を読む

地味な外見と裏腹に革新的なサービス機能とビジネスモデルを開発し続けるアマゾンが試読用ブラウザ+サービスKindle for the Webのベータ版を発表した。アマゾンのアソシエイトはブログやWebサイトにブラウザを埋め込んで大いに推薦し、批評することができる。しかし、この機能は、先週米国特許として認められたアマゾンの新技術(申請は2004年)と密接な関係があり、それはまたまた業界を震撼させる「本のパーツ販売」などを含むものだ。ここではとりあえず情報を集めてご紹介する。(創刊記念お試し記事)

特許技術で武装された高度なサービス機能

アマゾンは9月28日、“Kindle for the Web”という新サービスのベータ版を立ち上げた。ユーザーはKindleの書籍のサンプルを直接Webで試読することができるというもの。本の紹介ページにある「最初の章を無料で試読する」というボタンをクリックすると、そのまま第1章が表示される。

また、Amazon Associates Programに参加しているブロガーやWebサイトのオーナーは、Kindleの本をサイトに埋め込むこともでき、実際に購入が成立した場合には紹介料が支払われる。もちろん、著者や出版社の了解が必要で、合意を取りつけるまでには、相当な実証実験を重ね、説得材料を集めているようだ。ベータ版のデモを兼ねて、作家のKaren McQuestionJohn Millerが、自らの作品をブログで紹介している。このKindleブラウザは、画面サイズのほか、文字サイズ、行間、1行当たりワード数、背景色が選択できる。かなり良くできている。このブラウザは、無料ではなく有料サービスとして行うことも可能で、従来の「書籍内検索/特定ページ表示」にとって替わるものとなるかもしれない。

アマゾンはすでに2004年に「可変型課金を実現する…手法とシステム」として特許申請している(先週承認された)。消費者は必要とする部分だけについて支払う。分野や出版社など本の性質、ユーザーの過去の閲覧・購入歴、ページ数、章の数、集約の形などによって様々に設定を変えることが可能だ。ブック・ジャーナリストのセーラ・ワインマン (Sarah Weinman)は、これは必ずしもアマゾンの利益のための機能というわけではなく、アマゾンが申請書で表明しているように、購入後、内容がニーズに合わないことを知った購入者が“返本”する手間を減らすための機能ではないかとみている(アマゾンは1週間以内返本無料)。

Kindle for the Webは、かなり多面的な性格を持っていると思われる。つまり「買う前によく読んで」サービスだけではない、

  1. 高度なマーケティング・ツール(組合せ、特典、販促…)
  2. 本のパーツ販売のツール
  3. 広告メディア化のツール
  4. Google Book Searchへの対抗

というコンテクストが広がっている。たとえば、1ドル出してスティーブン・キング作品の1章を読んで、そのまま購入すると、他の本を買う際に1ドル分を使うことができる。しかし、出版社は違法DLや海賊版、それに無料立ち読みの蔓延を嫌うだろう。アマゾンがパーツ販売に踏み切るまでには、まだ時間がかかりそうだが、すくなくとも、こういうことが技術的に可能になったこと。たとえば、Adobe CSやiPhone OSなど、特定企業と関係の深い技術的内容のコンテンツを集め、ハイレベルの技術者に無償(つまり広告付)で提供する、といった使い方だ。

アマゾンの凄いところは、ユーザー志向を徹底しつつ、柔軟なビジネスモデルを創造し、時間をかけて慎重に実現する、ということだ。今回の特許申請にはジェフ・ベゾスCEOも名を連ねているが、Kindle発売3年前という時期には驚くほかない。(鎌田、09/30/2010)

参考記事

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  1. […] This post was mentioned on Twitter by Hiroyoshi Watanabe and kuniharu shimizu, Hiroki Kamata. Hiroki Kamata said: アマゾンWeb for Kindleはただの無料試読サービス付Web用E-Bookリーダではないらしい。私は特許技術を背 […]

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