E-Bookがハードカバーより高い!?

今年初め、米国の出版社はオンライン書店からE-Bookの「定価販売」という“歴史的”権利を奪取した。アマゾンは昨年までベストセラー本について、買取り価格に関わらず$9.99で販売していたのだが、出版社が設定した新価格体系はほぼ$12.99~$14.99というライン。つまり書店が設定しているハードカバーの売値に近いものだ。しかしそれではすまなかったようで、人気作家ケン・フォレットの新作"Fall of Giants"のKindle価格($19.99)が、なんとハードカバー価格($19.39)を上回るという事態が生じ、話題になっている。

"Fall of Giants"は1,000ページを超える大作で、ケン・フォレットは世界的な人気作家。出版社はペンギンの子会社。これほどばかげた価格は、さすがに前例をみない。E-Bookの価格についてはコストと無関係に、恣意的に(あるいは単純に紙の値段を模して)設定されていることが露呈した格好だ。紙の本が「市場価格」であるのに対して、E-Bookには「再販制」が適用されるという矛盾は、こうした価格逆転を拡大させる可能性がある。そもそも定価の50%を卸値として流通企業に売っていた米国の出版社は、小売価格の設定に関する経験をほとんど持っていない。

NY Timesのジュリー・ボスマン記者によれば、消費者はもちろんこの価格に憤っており、「E-Bookには10ドル以上は出さない」という声を紹介している(NYT, 10/04/2010)。アマゾンもこの状態が読者と著者にとって不当なものであるという声明を出した。しかし、ペンギンのスポークスマンは「7日間で2万冊のE-Bookを売った」と強気を崩さないし、フォレットの新著はなおKindleのベストセラー・リストに載っている。少なからぬ読者が20ドルのE-Bookを回避したことは間違いないが、同じ価格でもE-Bookを選ぶ読者がかなり存在することが明らかになった。それによって出版社が余計に儲けられたかどうかははっきりしない。しかしアマゾンにとって去年のように$9.99で売っていたら、かなりの逆ザヤを負担しなければならなかったことは確かだろう。

E-Bookの価格はまだ形成期であり、しかも紙の影響を受けている。価格決定権を持った出版社は市場経済に慣れていない。著名なメディア・ジャーナリスト、ダン・ギルモアが「クレイジー」と形容した状態は、おそらく数年は続くだろう。(鎌田、10/07/2010)

参考記事

Scroll Up