米国出版協会(AAP)およびIDPFは10月14日、8月の国内書籍出荷額を発表した。7月に再び上昇に転じたE-Bookは8月も好調を維持し、3,900万ドルで前年同月の2.7倍を記録した。過去最高だった前月の4,080万ドル(同2.5倍)に近い数字となったことで、9月の数字と合わせたQ3(7~9月)は1億2,000万ドル前後となり、四半期ベースでの停滞(Q1→Q2)から脱出することがはっきりした。Q4も2倍以上のペースを保てば、年間で5億ドルも望める状況。8月末時点のE-Bookのシェアは9%(2.63億ドル)で、2010年全体としては10%に近いものとなろう。
出版界全体の数字としては、8月は3.4%増の16億ドル。1~8月の対前年比でも6.9%の29.1億ドルと、まずまずだった。カテゴリー別の傾向では、8月は成年向けハードカバーが24.4%ダウンしたものの1~8月の対前年比ではなお5.2%と騰勢を維持している。同ペーパーバックも、それぞれ18.3%ダウンと、4.1%アップ。児童書・少年少女図書は落ち込みが目立ち、ハードカバーで14.6%、ペーパーバックで7.6%、それぞれ減少した(1~8月の対前年比)。対照的に、学術書、専門書、教育図書は、かなりの好調を維持している。1~8月を通した数字だけでみると、大学出版局の刊行物は、ハードカバー(5.4%)、ペーパーバック(4.7%)とそれぞれ増加、専門書も10.7%の増加。教育書では、高等教育(12.4%)、高校以下(8.0%)。総じて、実用的な図書は高い失業率にも関わらず、高い伸びを示していることが注目される。
さてE-Bookである。心配された今年の2Qの停滞感は払拭され、再び急成長が回復した。2008年 (1.19%)、2009年 (3.31%)から一挙に10%を目ざす地点にきたわけで、この急成長は驚異的といえる。Kindleを中心とするE-Readerが普及し、本をダウンロードして読むというスタイルが、少なくともアクティブな読書層に定着したことと同時に、出版社の大部分が昨年までの懐疑的姿勢(電子が増えても紙が減る)を捨て、E-Book推進に向かっていることを示している。日本の出版社が電子化になお懐疑的であるとすれば、事業の持続性と成長を犠牲にしてもE-Bookをやりたくない別の理由を疑われるしかない。 (10/17/2010)
Quarters 2002 through Q2 2010
Quarters | Revenues | Quarters | Revenues | Quarters | Revenues |
Q1 02 | $1,556,499 | Q1 06 | $4,100,000 | Q1 10 | $91,000,000 |
Q2 02 | $1,258,989 | Q2 06 | $4,000,000 | Q2 10 | $88,700,000 |
Q3 02 | $1,329,548 | Q3 06 | $4,900,000 | July + Aug 2010 | $79,800,000 |
Q4 02 | $1,649,144 | Q4 06 | $7,000,000 | Q4 10 | |
Q1 03 | $1,794,544 | Q1 07 | $7,500,000 | ||
Q2 03 | $1,842,502 | Q2 07 | $8,100,000 | ||
Q3 03 | $1,789,455 | Q3 07 | $8,000,000 | ||
Q4 03 | $1,917,384 | Q4 07 | $8,200,000 | ||
Q1 04 | $1,794,130 | Q1 08 | $11,200,000 | ||
Q2 04 | $1,887,900 | Q2 08 | $11,600,000 | ||
Q3 04 | $2,460,343 | Q3 08 | $13,900,000 | ||
Q4 04 | $3,477,130 | Q4 08 | $16,800,000 | ||
Q1 05 | $3,161,049 | Q1 09 | $25,800,000 | ||
Q2 05 | $3,182,499 | Q2 09 | $37,600,000 | ||
Q3 05 | $2,310,291 | Q3 09 | $46,500,000 | ||
Q4 05 | $2,175,131 | Q4 09 | $55,900,000 |
数字についての注記(IDPFによる)
- データは米国内のみの出荷額である。
- データは取次チャンネルを通した商業出版物の卸出荷額で、小売の数字はおおむね2倍となる。
- データは12~15社の商業出版社から提出された数字のみを反映している。
- データには図書館、教育、業務系へのオンライン販売は含まない。
- データが示すものは出版社の卸売上げ額である。
- 電子書籍販売の定義としては「インターネットを通じて電子的に配信されるか、携帯端末に提供される書籍」を採用している。