E-Readerは子供の読書欲を刺激(米国調査)

米国で最近行われた、子供と家庭の読書傾向に関する調査の結果が公表され、両親に比べて子供のほうがE-Bookや読書に積極的という興味深い結果が明らかになった。9~17歳の6割あまりがKindleやiPadなどの電子デバイスでの読書に関心を持ち、同年齢の3分の1は、E-Readerで沢山の本に触れることができれば、もっと多くの本を「楽しみに」読むだろうと回答。むしろ成長にしたがって「本離れ」「携帯依存」が生じていく傾向が明らかになった。日本では「デジタルは人格形成にゆがみを生じる」とまで言われているが、ゆがんでいるのは中身を問題とせずにデジタルを憎悪する心であることを、今回の調査は示している。

約50ページほどのレポートに興味深い数字や記述は多いが、目にとまった点をあげると、以下のようになる。

  • 9~17歳の子供のうち、E-Readerでアクセスできる本が増えれば読書量も増えるとしたのは、普段からよく読む層で34%、そこそこ読む層で36%、あまり読まない層でも27%いた。これは子供にE-Readerを与える大きな動機となるかもしれない。
  • 同年代の子供たちに本を読む楽しみを聞いたところ、43%が「想像が膨らむ」、36%が「刺激を受ける」、21%が「新しい情報に触れる」と回答。これは両親とほぼ同じ傾向を示した。
  • 3分の2の子供は、E-Bookがいくら読めても、紙の本があったほうがいい、と回答した。これは出版業界や教育者を安心させる数字かもしれない。

子供は本が好き。大人に比べて

しかし、子供たちに比べて両親は、さほどE-Bookを読みたいとは思っていないようだ。調査対象のうち、E-Readerを持っているのは6%にすぎず、76%は「購入の予定なし」と答えている。16%は来年中には購入するとしているものの、活発な読書層の20%を超えて浸透するのは、少なくとも現在のようなコンテンツでは難しいかもしれない。これは前週にご紹介したハリス社の調査とも符合する。調査を企画したScholastic Book Clubのジュディ・ニューマン社長は、「結果には驚いていない。今はまだE-Book時代の入り口なのだと考えている」と述べ、本を読むために買うにしてはE-Readerはまだ高い、と付け加えている。

楽しみのために(つまり義務的でなく)本を読む比率は、年齢とともに低くなる。6~8歳は読書に対する興味が最も高く、半数を超えるのに対し、15~17歳では25%に減少。男子ではわずか20%となる。ニューマン社長は、テクノロジーが問題であると同時に解決にもなると述べる。8歳頃から読書への関心が薄れ始めるが、それはデジタルメディアの影響だ。出版人は子供に読書の楽しみを覚えさせるようにしなければならないが、それにはテクノロジーを利用することができる。どんどんデジタルコンテンツを与えて知的刺激を与えればよい、というのが彼女の結論だ。

子供の1週間の活動時間に占めるメディアへの接触を示した左のグラフを見ると、年齢とともに読書に取って代わる傾向を示すのは携帯電話(メールや会話)、コンピュータでの娯楽であり、TVやゲームには変化がない。いわゆるソーシャル系に時間を費やして情報はGoogleで、という“安直”な傾向が年齢とともに強まって、なかなか本を読まない大人が出来上がるということなのか。ほかにデータがないので即断はできないが、常識的に考えて正しいように思われる。少なくとも「デジタルは人格形成にゆがみを生じる」などという何の根拠もない主張よりは納得できる。

Scholasticのリチャード・ロビンソン会長は、子供時代に幅広い本を、楽に読むことで、将来大学や仕事、日常生活で難しい本を読むスタミナをつけることができる。一人一人が好きな本を選び、所有することで、言語能力に自信がつき、知ったこと、感じたこと、自分自身のことについて、読み、書き、話す能力が得られる、と述べている。これもまた常識的だが正しい。メールを使い、Twitterでつぶやいても、言語表現がますます貧しくなれば、それはコミュニケーションを脱知性化することで、人間の社会性と社会そのものの衰退につながるように思われる。

言うまでもなく、米国と日本では家庭の教育方針がかなり違うし、携帯の普及率もかなり高く、したがって子供と大人の読書体験、メディア体験の差もそれほどない可能性が強い。日本ではまだE-Readerが普及していないので同様の比較はできないが。

The 2010 Kids and Family Reading Reportは、マーケティング調査会社のHarrison Groupが2010年春に1045人の子供と同数の両親を対象にインタビューを実施、集計を行った。誤差範囲は±3.2パーセント・ポイントとされている。なお調査は2006年から隔年で実施されており、今回が3回目。(鎌田、10/07/2010)

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