先週はCEAの調査をご紹介したが、NYTimes11月14日付でジュリー・ボスマン記者は、クリスマス商戦の焦点になったE-Readerを取上げた。Consumer Reports誌の調査では、10人に1人がE-Readerを今年のギフトに選んでいる(去年は4%)。去年はKindleとSony Readerだけだったが、数十もの選択肢が登場して賑やかになった。通販1本だったアマゾンもKindleも量販店に卸し、TV-CMも流す。そして何よりも、出版関係者がクリスマスのE-Bookの売上がどこまで伸びるかに胸を高鳴らせている。これがほんとうの“電子書籍元年”の風景なのだろう。
羨ましい話だが、アメリカではE-ReaderとE-Bookが今年のクリスマスギフトとして最も注目を浴びるものとなっている。今年$150を切ったリーダは値ごろな存在となり、リーダを持っている人にはE-Bookの現物かギフト券を好きなだけ贈ることができる。事実、Kindleを持っている5人に1人はプレゼントで貰ったという調査がある。上限は$200というのが多く、11月26日に$249で登場するNOOKcolorはギリギリ、「欲しい」という声が最も多いiPadはさすがに上限を超えている。
去年と大きく違うのは、出版業界がE-Bookに大きな期待をかけていることだ。ちょうど1年前には、出版社にとっての旗艦である売れ筋ハードカバーへの悪影響を懸念して発行をズラしていたが、今年は同時発売によってハードカバーの刷り部数を抑制し、1,000万人を超えると想定されるE-Readerのオーナーに期待をかけるようになっている。多くの調査によって、彼らがガジェット好きではなく、むしろ本の最も活発な読者層であることが判明したから、これが最も賢明な戦略だ。これからは売れ残ったハードカバーが特価の$4.95くらいになって店頭に積み上がることも減るだろう。
NYTimesの記事は、「E-Readerの普及を怖れていないと主張する」出版関係者の声を伝えている。「クリスマスツリーには沢山の読書端末が吊り下げられる。それだけE-Bookが売れるということだ」とペンギンUSAのオンライン販売部長のティム・マッコール氏が言えば、サイモン&シュスターのキャロライン・レイディCEOも、E-Readerを贈られた人が買い始める本で、クリスマスにはE-Book販売が急増することを楽しみにしているという。この変わり方の速さに驚く。しかしこれが人間であり、自分は最初からそう考えていた、と主張するようになるのは言うまでもない。日本の関係者にもそのうち「活字文化を守る」などと悲壮な覚悟を吐露したことを気恥ずかしく思う時が来るだろう。
ところで同じく最も期待されているiPadについて、アナリストの予想は楽観・悲観が交錯しており、3Qで419万台を売ったiPadが4Qには600万台になるとする見方と、iPhoneやラップトップと比べるとまだニッチで、ギフト商品としては高いので500万を超えないという見方に分かれている、と伝えられている (eBOOK Newser, 11/15)。サムソンがタブレット製品のの製造を計画より半減したという、気になる情報もある。 (鎌田、11/16/2010)
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