E-Bookが急浮上し、印刷版沈下の米国出版界 (♥)

2010 年は、たしかに米国にとっての「 E-Book 元年」だった。この一年に米国で何が起きたかを知ることは、歴史的にも意味があることだ。幸いにして、米国の出版産業、あるいはマーケティング会社は様々な角度からこの構造変化を捉えるための定点観測データを揃えており、それらを分析することで、間違った常識や俗説にとらわれない正確な見方を得ることができる。たとえば、 E-Reader は印刷書籍の購買を減らすのか、書籍産業全体としてはどうか、ユーザーは専用リーダと LCD タブレットをどう使い分け(てい)るか、といった基本的問題は、様々に語られてきたが、まだコンセンサスは生まれていない。[全文会員]

米国の「元年」:印刷書籍は減少し、E-Bookは増えるが相関は読めず

消費者の書籍購入行動を調査しているバウカー社(Bowker)のPubTrack Consumerサービスは4半期ごとに調査レポートを発表しているが、第3四半期のデータがPublishers Weekly (12/20)に紹介されている。注目すべき点としてあげられているのは以下の通り。

  1. 10月時点で、E-Readerを購入したいと考えている人は20%(前年同時点は10%)
  2. 毎日あるいは毎週E-Bookを読むと答えた人は10%超(前年は3%)
  3. 書籍販売部数に占めるE-Bookの比率は4.2%(前期比1ポイント増、前年比2.5ポイント増)
  4. 印刷書籍全体、および一般ペーパーバック書籍の販売部数は変化なし。
  5. ハードカバーは34.4→32%、量販ペーパーバックは21%→18.4%に減少。
  6. E-Book購入者はますますデジタル版の購入を増やす傾向(56.6%→64.0%)。
  7. E-Book購入者による印刷書籍の購入減少は、全体傾向とまったく同程度。
  8. 書籍全体への支出額は、2009年3Qに比べ一人当たり10%ほど減少($34.81→$31.65)
  9. とくにフィクションへの支出額が12.7%減少($19.62→$17.12)。
  10. ノンフィクションはより-2.9%と緩やかな減少($19.56→$19.00)。
  11. 子供の書籍購入額も-8%($18.06→$16.62)。
  12. 以上の減少は、主として部数より単価の減少によるもの。

全体として印刷書籍の売上は減少しているが、E-Book購入者が非E-Book購入者よりも印刷書籍の購入を多く減らしているわけではないので、それがE-Bookのせいだとは言えない。しかし、E-Book購入者はハードカバーや量販ペーパーバック(多くはフィクション)をデジタル版に切り替える傾向がみられるので、そうした意味で影響が及んでいるとは言える。とはいえ、米国の業界ではこれを部門間のシフトと考え、年率100%以上の成長を続けるデジタルが出版社の経営を圧迫するとはみておらず、むしろ書籍市場の縮小に歯止めをかけるものと期待している。

日本はどこへ行くか

日本の出版界はこれまでE-Bookをまず「脅威」と考え、印刷書籍にまったく影響しない範囲での取組みに留めてきた。もちろんそれには、(1)デジタルによるカニバリズム(共食い)への怖れのほかに、(2)再販の制度的保証のないE-Bookへの怖れ、(3)著者の市場指向による関係変化への怖れ、(4)デジタル版への付加コストの負担、(5)端末の普及の遅れ、といった事情があったわけだが、あれこれ頭を悩ました割には「脅威」の実体は見えず、逆に米国からは景気のよい話が伝わってきた。

米国と日本とで変わらないのは出版市場の縮小である。日本の出版社はマンガと雑誌(広告)という景気に敏感なコンテンツへの依存が大きいだけに、市場縮小の影響はより深刻だ。大手でさえ、あと2年間もデフレと赤字が続けば、デジタル基盤への投資の余力もタイミングも失ってしまう可能性が大きい。欧米に倣おうとする一部の出版社はそうなる前に動き、残りの多数はなお「趨勢」を見極めようとするだろう。その場合、コンテンツのデジタル化は既存の出版社以外によって進められることになる。読者と著作権者がそれを望むからである。 (12/28/2010)

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