(社)日本書籍出版協会、(社)日本雑誌協会、日本電子書籍出版社協会、 デジタルコミック協議会の出版社系4団体は12月14日、iTunes App Storeで村上春樹氏など著名作家の作品の海賊版が海外で出回った問題について、アップル社への正式抗議文を公開した。それによれば、著作権侵害について事前審査がなく、違法が指摘されて以降の対応も不十分だという。このニュースはWSJを通じて米国でも知られるようになったが、類似の問題が(アップル以外でも)多発することは必至であり、本格的に体制を整備しないと追いつかないだろう。
まず訴訟、話し合いはそれから…がグローバル・スタンダード
抗議文は「著作等の内容についての事前審査は行いながら、明白な著作権侵害行為をチェックできないとは、到底納得できかねる説明です」とあり、これまでの事前検閲への恨みが込められているようだ。問題の海賊版はスキャニングによって複製されたものであり、事前にチェックしていないとすれば明らかに怠慢と言える。また、削除またはサービス停止を行わず、損害額の認定に必要な海賊版の販売データも提示していないとのことで、4団体の主張の通りだとすると、アップル社は電子コンテンツの販売代理店としての責任を果たしていないことになる。欧米であればすぐに訴訟の対象となったと思われるが、抗議文はあくまで紳士的に協議を呼び掛けている。
コトは法律問題と道義的問題にまたがるが、法律問題としては、アップル社の対応が不十分である以上、すぐに問題コンテンツのサービス停止の仮処分を申し立てるべきで、話し合いはそれからでいい。まず訴訟、話し合いはそれから、というのがグローバル・スタンダードなのだ。被害者は第一義的には著者なのだから、出版社と業界団体としては著者の利益を代表して争う姿勢を(訴訟で)見せないと、信頼感に関わるだろう。4団体は「アップル社」というものが一つだと考えているようだが、こうしたメッセージは本社のiTunes責任者と法務部門の両方に届かない限り、放置される可能性がある。日本では「後々のことがあるので」最初から訴訟にはしないのだが、それはアップルの担当者によっては理解されないリスクが高いのだ。現に、米国のメディアには出版団体の「抗議」が "complain"と訳されている。これでは「泣き言」「不平」「苦情」ていどにしかならず、誤訳に限りなく近い。英語の抗議文を同時公開しなかったのは大きな間違いだった。
同様の問題はアマゾンにもあり、その都度対策が取られて審査が厳しくなっている。最近では、Googleなどで無償提供されている著作権切れ本が、アマゾンで堂々と値段をつけて出ていて問題となった。もちろん、指摘されてすぐに停止している。今回の日本の問題に対するアップルの対応は遅いとすれば、本社にきちんと届いていない可能性もある。
21世紀にデジタル海賊は完全に抑止できない。被害者は有名作家とその版元に限られるだろうが、被害を最小限に抑えるには、(1)正規版を出す、(2)国際的な監視機構を持つ、(3)迅速な法的対応を徹底する、という3つが重要となる。監視機構や(多国間にまたがる)法的対応のシステムは政府が支援して業界団体が設立するべきだろう。◆ (鎌田、12/16/2010)
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