米国E-Bookビジネスの10大予想×2

本誌はすでに2011年のトレンド予想を発表(12/02)したが、米国の関係者によるものもだんだん上がっている。E-Bookのようなテーマは、独自の視野を持つ人間の見方をなるべく多く読んだ方がいい。今回ご紹介するのは、客観性を売りにするアナリストではなく、E-Bookのビジネスに直接関わる、Smashwordsの創業者マーク・コーカーとE-Readsのリチャード・カーチスの両氏(いずれもMediabistroのGalleyCat所載)。年齢も背景も違い、前者はやや直線的で、後者はバランスの取れた見方を示しているが、いずれも興味深い論点を提供している。たしかにこれらの論点は2011年に様々な形で取上げられることになるだろう。

マーク・コーカーの2011年10大予想

自主出版支援サービスSmashwordsの創業者のマーク・コーカー氏は、出版社に頼らない独立系著者(インディーズ)が専門的知識と経験を身に着けることでベストセラー・チャートを登りつめ、それによって業界の構図が変わることを予想(あるいは期待)している。ほとんどが彼のビジネスに関するものであるが、一種の革命宣言のようなもので、とても分かりやすくていい。

  1. E-Book販売は上昇、でも販売部数はさらに驚き。:2011年末までにはE-Bookが商業出版物売上の20%、さらに部数では3分の1を占める。
  2. E-Book革命の第2章はエージェントが書く。:著者の経済的利益を最大化する版権エージェントが自主出版者と結びつき、販売プラットフォームと協力しつつ新しいビジネスモデルを開拓する。
  3. 有名著者がデジタル版著作権を手放さなくなる。:取り分の多さ、刊行サイクル、配布に要する期間の短縮などでインディーズ出版のメリットは明らかなので、有名著者も一部あるいは全部を自主出版するようになる。
  4. 新人にとって自主出版は最後の手段ではなく第一の選択になる。:今日もなお出版社の支援と権威に期待する新人著者は多いが、伝統的出版社のメッキはどんどん剥がれていて、著者たちも認められるまで長くは待てない。2011年にスターが登場すれば状況は一変する。
  5. 大手出版社(ビッグシックス)も著者印税を増額。:出版社には他に選択肢はない。ただし、大手出版社が市場から退場するわけではない。著者たちに高品質のサービスを提供する賢い出版社が生き残る。
  6. E-Bookの価格は低下。:エージェンシーモデルで結束した5社の価格維持努力によっても、E-Bookの価格は下がる。本の供給は過剰気味であり、廉価/無料のコンテンツはさらに増加。価格に敏感な読者は安いものから読む。インディーズが価格低下を主導し、大手も抵抗できない。
  7. お客様は神様―どの本がヒットするかは出版社でなく、読者が決める。:カネをかけたマーケティングよりもソーシャルメディアに結晶化された読者の声が市場を動かす。出版社も「顧客」とは取次や書店ではなく、まず読者であることを知るようになる。
  8. E-Bookの世界市場は急拡大、出版社は販売権の地域限定を再考するようになる。:E-Bookの世界市場は、米国出版界に未知の新しい収益源をもたらす。出版社はE-Bookビジネスにとって障害でしかない販売権の地域的限定を外し、言語圏で区分するようになる。
  9. 発見されること(discoverability)がホットなテーマに。:出版物が増えるほど、消費者には発見されにくくなる。解決策は、本を入手性を高め、メタデータを活用、読者と共鳴する本を出版、ファンを営業支援部隊として位置づける、など。
  10. ビッグシックスはDRMを手放さず。:大手出版社は読者を信用できない。DRMが余分なコストで、読者もDRMフリーを望むことが明白になり、販売プラットフォームが対応しても、2011年には変わらないだろう。これは間違いであってほしいが。

リチャード・カーチスの2011年10大予想

リチャード・カーチス氏は、ベテランの版権エージェントで、Ereads.comの社長。その発言はつねに多くのE-Bookビジネス関係者から注目されている。

  1. Google EditionsがE-Book市場の様相を一変させる。
  2. 出版大手、またはそれとE-Book出版社との合併劇が1件以上起こる。
  3. ビッグシックスは著者印税を現行の25%から増額。
  4. スクリーンに長時間拘束されることによる子供の学習・読書習慣への影響について、教育者、心理学者、両親から問題が提起される。
  5. 大学生は電子教科書より紙を選ぶ。
  6. オンデマンド印刷は小売モデルとして定着し、返本を前提にした書籍流通はますます減少。
  7. 書店や非書店でもE-Bookキオスクが登場する。
  8. 児童から青年層までのタイトルが最大の売れ筋となる。
  9. 著者は書店回りやカンファレンスをビデオミーティングで済ませるようになる。
  10. 聞いたこともない小出版社の活動が活発化し、少数の読者層を相手にしたニッチ出版で利益が得られることを発見する。

(12/28/2010)

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