フォレスター・リサーチ社は1月4日、米国タブレット市場の最新予測(改訂)を発表し、2015年までに米国のオンライン消費者人口の3人に一人がタブレットを保有することになると予測した。同社は昨年6月のレポートで350万台としたが、iPadは単独で夏までにその数字を達成。今回のレポートでは、2010年のタブレット販売台数を1,030万台としている。競合製品は多数登場するものの、2012年まではiPadが市場をリードするとしている。昨年からまた上方修正だが、残念ながらなお問題が解決されていない。[全文=♥会員]
タブレットとはどんなデバイスか
フォレスターのモバイル・コンピューティング担当アナリスト、セーラ・ロトマン・エプス氏は、明晰・明快な予測で知られるが、筆者からすると単純な予測モデルを信じすぎるきらいがあり、2010年のE-Readerやタブレットの予測では外しまくった。"Kindle vs. iPad"を図式化して後者の勝利を予言。米国や日本の出版関係者の多くはこれを信じてしまった。iPadのメガヒットを予測したものの、その実際のスケールは予測の2倍以上だった。消費者の多くが、まだ見ても触れてもいない製品の売れ行きを予測することの難しさを示している。2年目以降はどうだろうか。常識的にはそう外れることはないのだが、筆者は別の見解を持っている。前提が間違っていると思うのだ。
まず、レポートではタブレットはiPhoneのように新品購入とともにリプレースされ、PCやテレビのように長く市場に留まることはないと想定している。これはiPad 2の登場とともに、すぐに誤りであることが判明するだろう。Kindleの旧型機の多くはなお(家族に渡ったりして)市場に滞留している。十分に使えるからだ。メディア・タブレットが3~5年(平均4年)市場に留まるとすると、フォレスターの販売予想を前提としても、2015年には1.5億台近くが(使用形態は別として)設置ベースで存在していることになる。0.8憶と1.5憶では、コンテンツビジネスの側からすると大違いだ。
タブレット市場の3つの焦点
ロトマン氏は、タブレットをiPadに代表される「ライフスタイル・デバイス」としてのメディア・プレーヤーとしての側面から見ている。もちろん、これは2010年に市場として確立したもので、この市場がここ数年のタブレット市場を牽引することに異論はない。問題は、まだ顕在化していない「ビジネス・デバイス」あるいは「ユーティリティ・デバイス」としての市場だ。米国のIDCなどはすでにPC市場の数字にiPadを含めてシェアを出している(するとアップルがトップシェアとなる)。ここまではやりすぎと思うが、タブレットが本質的に「パーソナルコンピュータ」であることは間違いない。だとすると、メディアプレーヤーを中心とした「ライフスタイル・デバイス」と別の巨大市場を考えないわけにはいかない。
- ビジネス・デバイス:PCの代替(シンクライアント)としての側面が大きくなる。企業が望むのは、(1)堅固なデータ・セキュリティ機能を持った社員用端末、(2)サービス機能に最適化したカスタマー端末だろう。iOSはこの市場でのファーストチョイスではない可能性が強い。Windows、QNX (BlackBerry/PlayBook)などがここでは強い。
- ユーティリティ・デバイス:アカデミック/スクール、カタログ、ドキュメント、Webブラウジング、ビデオ、ゲームなどの各種用途用タブレット。おそらくここではAndroidが主役となるだろう。
つまり、われわれの見立てでは、PC/ノートブックと同様、タブレットは「ライフスタイル」「ビジネス」「ユーティリティ」の3つのフォーカスに広がり、互いにオーバーラップする。これらを合計すれば、2014年までには軽く2億台を超え、2015年には3億台にも達するだろう(「設置」ベース)。だからフォレスターはまたも予想を外す(改訂する)可能性が強い。日本でどのくらいになるかは不明だが、米国の10分の1を下回ることはないと信じたい。E-Bookビジネスにとって、これは歓迎すべき事態というだけでなく、性根を入れて取組まなければならない局面だ。コンテンツ市場はグローバル化し、リーダとコンテンツの価格は低下し、マーケティングには最大限の想像力が必要とされる。◆ (鎌田、01/05/2010)