さらば「ガラパゴス」!?:GALAPAGOS海外へ

Device Magazine (12/30/10)が伝えるところによると、シャープがGALAPAGOSの海外展開を計画している。まず米国の書籍・雑誌市場に投入するが、国際版はePUBをサポート(!)し、Wi-Fiに加えて3Gを装備する。そして5.5型と10.8型製品を米国に続き、中国、インド、ブラジルにも展開する。また朝日Web版(12/31/10)によれば、インドで電子教科書端末として実用化する方針を固めたという。日本ではブックストアでのコンテンツの拡充が「遅々として」進んでいるが、シャープは日本に拘ることなく成長性の高い海外に目を向けている。

ePUB搭載のメディアタブレットとしてグローバル展開

インドでは1月から名門インド工科大学(IIT)のハイデラバード校と共同で電子教科書配信の実証実験を始める。インドは世界的企業がR&D、オフショア開発の拠点とする“ソフトウェア大国”だけに、GALAPAGOSにとってのアプリケーション開発拠点とすることも考えてのことだろう(タブレットは専用リーダと違ってコンピュータであり、アプリケーションを必要とする)。大学はタブレット・アプリケーションの揺籃の地となる可能性が強い。インドから欧米、中東、アフリカへの展開も相対的に容易だ。中国も潜在市場の大きさでインドに優ると思われるが、政府の後援と支援が条件となり参入が難しい。

タブレット市場はiPadによって、ITにおける巨大な新大陸であることが証明された。旧年中に有力メーカーはほぼすべて製品を投入、あるいは発表。2011年は「タブレット・コンピューティング」の年になることが確実視されている。その中で先頭集団に入ったのは、シャープ(GALAPAGOS)と、欧州先行の東芝(Folio)だけだった(パナソニックはまだ)。ネーミングがあまりにひねりすぎていて、しかもXMDFとの結びつきが強調されすぎたせいで、これが「ガラパゴス日本」専用端末だと誤解された観がある。日本ではそれでよいと考えたのかもしれないが、国際版にはしっかりePUBをサポートしてきた。これで将来ePUBの日本語対応が進化すれば、ガラパゴス版にePUBを追加すればよい。ガラパゴスの出版社の意向を尊重しながらの国内戦略は、非常にクレバーだ。

タブレットは新大陸:ここで生き残る者が「日本」

シャープのGALAPAGOSは日本では「専用端末」と称しているが、海外では「メディアタブレット」として出ることになる。この2つがカテゴリーを異にすることは、いわゆる「Kindle vs. iPad」が虚妄だったことにより、2010年中に決着がついた。カラーLCDでビデオ再生可能な多機能タブレットと、白黒電子ペーパーの読書端末とは、カラーと白黒という以上の違いがある。後者は価格と重量と単機能性によって、現在の99.9%以上の書籍に最適なものとなっている(寝転がってフライパンを持てる人は少ない)。デバイスメーカーではないアマゾンがiPadを追わなかったのは当然と言える。結局、KindleとiPadはともに年間1,000万台規模を販売する実力を見せた。

もちろん、そうした事情はシャープも十分承知している。GALAPAGOSは本質的に高性能・高機能を志向したマルチメディア・タブレットで、世界市場を相手にしなければ最初から勝ち目はない。そしてグローバルな展開は、世界が日本メーカーに期待することでもある。実際、GALAPAGOSにとって、じつは日本市場こそが鬼門であり難関。成長力が高い海外こそ容易なのである。もちろん競争は多い。iPad、NOOKcolor、Galaxy Tab、PlayBook、HP Slate、PalmPad、Dell…ほかにも1ダース以上はある。しかし、世界は別のことを見ている。

  1. コンテンツは英語を中心に300万以上もあり、独、仏、西、葡、伊語コンテンツも急速にデジタル化が進む(技術的、コスト的に何の問題もない)。
  2. アプリケーション型コンテンツ(拡張E-Book)の開発が世界的にブームとなっている(とくに大学での教育アプリケーション、児童書、エンターテイメント、実用書など)。
  3. 初年度で1,000万台規模に達したタブレットは、間違いなくPC以来のメディアデバイスとなるという共通認識がある。
  4. ビジネス、教育からゲームまで、タブレットがベースとなる。タブレットと拡張型E-Bookによって、コミュニケーションの形が変わる。つまり「応用は無限」。
  5. PCが衰退し、携帯が飽和に近づき、クラウドコンピューティングが世界を覆う中で、様々なタイプのタブレットだけが確実な巨大市場。ここで生き残れないと10年後には消える!?

こうした可能性が半ば常識として関係者に共有されているからこそ、多くのメーカーが全力を投入しているのである。マイクロソフトが10年越しの度々の失敗にもかかわらず、再々再度挑戦するのはそのためだ。シャープが日本というミクロコスモスに限定、最適化することなく、グローバルな戦略を持ってGALAPAGOSを展開しようとしていることは高く評価できる。新年に向けて明るいニュースだ。

蛇足だが、実際の「ガラパゴス」は進化・適応の生きた見本であり、「鎖国・衰退」というイメージは正しくない。イグアナなどは人類を遥かに凌ぐ進化の実績があり、様々な環境の変化に適応してきた。「日本の…」とか「和魂洋才」とか、肩ひじ張らないほうがいい。壁は日本にあって「世界」にはない。世界で生き残れる日本企業が「日本」なのだ。 (鎌田、01/01/2010)

追記

1月6日付のシャープUSAのCES向けプレスリリースによると、同社はGALAPAGOSとともにクラウドベースのブックストアサービスを2011年中に米国でスタートさせる。書籍、ビデオ、音楽、ゲームを提供する総合的なコンテンツ配信プラットフォームとなる。コンテンツはePUBとともにXMDFで提供するとしているから、XMDFの海外展開も視野に入れていることになる。ただし、すべてのコンテンツを2つのフォーマットで提供することは無意味なので、ePUBとXMDFを併用し、とくに現行のePUBより高度な機能を追求する拡張型E-BookについてXMDFを試すことになろう。しかし、GALAPAGOS専用フォーマットである限り、XMDFの可能性は小さい。したがって、東芝がサポートしているリーダ・ソフトblioやショートムービー付E-BookのVookのような形での展開を目ざすことになるだろう。

いずれにしても、XMDFとePUB (実体はHTML)の距離は、少なくとも日本語組版を伴わない海外版ではそう遠いものではないと思われる。XMDFが生き残るためにはePUBと上位互換(ePUB+α)であることが要求されるかも知れない。また、海外では開発環境を公開し、提供しないと普及しないので、いずれ対応してくると思われる。(01/06/2010)

Comments

  1. 新年明けましておめでとうございます。

    「ガラパゴス」の世界進出、というのは言い得て妙ですが、もしかしたら単に世界水準のネーミングでいいアイデアが出なかったということなのかも知れませんね。(もう色んな名前で溢れてますしね) つまり最初から世界市場を目指していた、と。
    あとはサードパーティからのコンテンツを受け入れるマーケットプレイスや、各国ごとの著作権問題、言語の問題など主要な問題をクリアーしていくことですね。ガラパゴス流なソリューションを期待しています。

    本年もE2Fの活躍を期待しております。

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