米国出版界はデジタルブームに沸いている。フォレスター社の調査によると、出版社トップは2014年末までに、E-Bookの販売額が全書籍の半分を占めるようになると予想、それが出版社の経営にとっても好ましいことと考えている。たった1年前の不安は吹き飛び、自信満々なのだ。これはむしろ危ない。まだデジタル革命の第1幕で、読者、著者、出版社に有利にしてデジタルが定着するようにアマゾンが演出しているからだ。これはイノベーションの第1幕ではよくあることだ。当面、出版社には嬉しい局面が続くだろう。しかしその先には…。その検討に入る前に、まず数字を確認しておきたい(要約はTeleRead, 01/25による)。
大手出版社のデジタル・ユーフォリア
今週(1/21-26)ニューヨークで開催されているDigital Book World(DBW)において、市場調査会社フォレスター社のアナリスト、ジェームス・マッキヴェイ氏は、リアルな「EBook元年」を経験した米国市場を次のように概括した。
- 約1,000万人がKindleなどの専用リーダを保有している。
- 同じく約1,000万人がiPadなどのタブレットを保有している。
- iPadユーザーの約3分の1はKindleを保有している。
- 約10億ドルがE-Bookに消費されている。
- 2011年には、最低でも2,000万人以上が専用リーダとタブレットでE-Bookを読み、13億ドルがE-Bookの購入に使われる。
では出版社はこの変化にどう対応しようとしているか。米国の出版市場の約65%を占める27社35名の経営者を対象に、昨年9月に行われた調査によれば、圧倒的多数の89%がデジタル化に関して楽観的で、74%は読書環境がよくなり、66%は人々の読書量が増え、83%が自社のデジタル転換に自信を示している。63%はすでにデジタル化計画を持っており、80%は全社的な再トレーニングの必要を感じている。
専用リーダとタブレットの関係について、46%の経営者は後者が優勢になると考えており、E-Inkデバイスがベストと考えるのは29%に止まる。E-Bookを新刊ハードカバーと同時にリリースすると応えたのは83%。エージェンシーモデルより卸販売を選択するのは52%(前者が主流になったと考えられていたが、これはやや意外)。アプリについては意見が分かれており、46%が潜在力を認めているのに対し、48%は現段階では開発にコストがかかりすぎるとして消極的である。重要な収益源となると考えているのはまだ3分の1にすぎない。
印刷書籍については、52%が今年もやや減少すると見ている。平均的な回答者は2014年末までには、E-Bookの販売額が全書籍の半分を占めると見ているが、自社がそうなるのは2015年半ばとなることを予想している。フォレスター社は2011年も調査を継続する。 ◆ (01/27/2011) 解説とコメントは「出版界の楽観主義とリスク」=会員向け記事参照。
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