ニューヨークタイムズ紙(NYT)は3月17日、かねて明らかにしていたWebサイトへのペイウォール(部分課金制)を3月28日から導入すると発表した。Financial Timesや日本の日経新聞などと同じく、有料記事を一定回数ダウンロードすると、以後は購読が必要となる仕組み。Web広告収入が増加する中での有料化だけに、ビジターを減らさないで収入を増やす均衡点を発見することが課題となる。なお、NYTおよびその国際版である International Herald Tribune 印刷版の定期購読者は追加料金なしでフルにアクセスできる。
非定期購読者へのリミットは20回で、21回目をダウンロードしようとすると購入オプションが提示され、Webサイト+スマートフォン・アプリについては4週分15ドルまたは1年分195ドル、Webサイト+iPadアプリについては同じく20ドルと260ドル。デバイスによらないオールアクセスプランは、35ドルと455ドル。しかし、現在のところKindleとNookは含まれていない。「ほんの数年前にはWebを介したコンテンツのアクセスに金を出す人はいないと固く信じられてきた。今回の措置は当社の将来への投資で、それによってジャーナリズムの社会的使命とデジタル技術革新の持続を可能とする新しい収入源を開拓するものだ」とアーサー・サルツバーガー会長は社員向けの声明で述べている。
NYTの記事では、新聞ビジネスのアナリストによる「やるか殺られるかの問題」というコメントを伝えているが、実際印刷版の広告収入の減収は確実に進行しており、オンライン購読の開拓は急務になっている。しかし容易ではない。新聞全記事への無料アクセスは過去15年間継続しており、ユーザーにとって対価を払って読む「習慣」はまったくない。もし十分な数の購読者が定期購読に移行しなければ、オンライン広告収入の減少によるダメージを受ける。逆に「忠実な読者」である定期購読者の存在は、紙の場合と同様、広告主に対して相対的に大きな価値を訴求できる。2010年のNYTの広告収入は7億8,040万ドルで、前年比2.1%の減少となっている。
ペイウォールの成否は、広告を採用しない本誌にとっても死活的意味を持つ。引き続き、(停電による中断の後で)検討していきたい。◆ (03/17/2011)