ランダムハウスがエージェンシー制に移行

世界の出版最大手のランダムハウス社(RH)は3月1日からE-Bookの販売に関してエージェンシー・システムに移行すると発表し、同時にアップルのiBookstoreへの出品を開始した(英国RHでは当面採用を見送る)。これは米国出版界がE-Bookに関する限り小売価格(定価ではない)の決定を出版社が行うというモデルを受け容れたことを意味している。影響は少なくない。出版社はマーケティングの要である柔軟でダイナミックな競争的価格決定を、独自に行う体制を整備しなければならないからだ。著者との関係でも「成功報酬」的な要素が大きくなり、細かい対応が必要になるだろう。

欧米の大手6社の中で、唯一エージェンシーモデルを採用していなかった最大手のRHが採用を決めたことは、iPadの登場とともに始まった出版社とオンライン書店の契約形態の変化が、販売代理制の優位という形に決着したことを示すものとなった。これで米国市場のE-Book流通量の半分以上(現在は推定49%)がエージェンシーモデルで販売されることが確定的になったからである。これまでRHのE-BookはアップルのiBookstoreでは販売していなかったが、ここで販売することも理由の一つだろう。しかし、それが大きな理由とも思えない。まだ書店としての存在は大きくないからだ。

エージェンシーモデルの採用は、出版社が小売価格を決め、オンライン書店が一定のマージン(iBookstoreは30%)を徴収した残余を受け取ることを意味する、日本にはなじみのあるシステムだ。しかし、小売価格を固定しない米国では事実上E-Bookとともに登場したもので、RHのマーカス・ドールCEOは、昨年10月のインタビューでも、「これまで小売価格を決めたことがない」と導入に消極的だった。確かにアマゾンやB&Nのように、顧客に接している書店ビジネスの経験がないと、「売上を最大化する最適価格の決定」は、出版社にとって未経験の領域だ。漫然と「定価販売」をしていたのでは大きな機会損失につながるからで、新たに専門のスタッフが必要になる。出版社にとって、小売価格が決定できることは必ずしも利益ではなく、印刷本では卸販売制が変わる機運はない。RHのデジタル化比率は現在8%で、2011年中には10%を超えると見られている。

RHは決定の理由を述べていないが、(1) iBookstoreで販売するため、(2) 独立系書店の要望、といった理由が考えられている。RHの新方針を最も歓迎したのは書店で、米国書店協会(ABA)は次のような声明を発表している。「私たちは当初から、エージェンシーモデルが、書籍産業だけでなく、一般消費者の利益にかなうものだと考えていました。」「今回ランダムハウス社が、この問題について熟慮を重ねた上でエージェンシー価格制の採用を決定されたことを、私たちは高く評価し、称賛を惜しまないものです。」 (03/03/2011)

Scroll Up