IDPFがePUB 3正式版をリリース

IDPF理事会は5月23日、ePUB 3の草案を正式に承認し、ニューヨークで開催されたIDPF Digital Book Conferenceで、ビル・マッコイ専務理事から発表された(仕様書→IDPFのサイト)。Webの現世代の仕様を取り入れ、動的コンテンツに対話できるようになったほか、マルチコラムもサポートされ、名実ともにE-Bookの標準としての水準が高まったが、とくに日本にとっては、世界中の製品に広く実装されるデファクトの国際標準において日本語組版仕様が初めて制式化されたことに意義がある。これによって出版市場はグローバル化に向かって大きく一歩を踏み出すことになる。標準によって一挙に世界が変わるわけではないが、進む方向は確実に変わった。

グローバルな問題解決:アクセシビリティから言語環境、数式(MathML)まで

ePUB 3については、本誌でも様々な角度から取上げていきたいが、この標準はそれだけ多くの側面を持っており、例えばDAISY Consortiumとの共同作業によって実現したアクセシビリティ機能が、汎用的な商業出版物のフォーマット標準に組込まれたことの意義は、掛け値なしに人類のコミュニケーションの歴史上に特筆すべきことだ。オーディオブックもそうだが、障碍者に知識情報へのアクセスを保障するという社会的問題を商業(市場)的に解決するという芸当において、アメリカ人の知恵はたいしたものだと思う。

マッコイ氏は、カンファレンスにおいてePUB 3の目標のひとつが出版者にとってのコンテンツの価値を高めることであったと述べたが、これは標準を採用することでコンテンツがそのまま再編集なしに多種多様な用途、実装環境に利用可能になることを意味する。これは仕様を策定すればよいわけではなく、実際に利用(ツール/デバイスでの実装)され、また関連する標準において採用されることで実現する。幸いにしてePUB 3は既存のW3Cのデファクトを合理的に再編集したものなので、その労力は最小限で済むだろう。アドビのInDesign 5.5、アップルのSafariブラウザはすでに一部に対応している。

マッコイ氏によれば、ePUBをサポートする主な製品は、晩夏までには3への対応を完了するだろうという。主要製品とは、(1)ブラウザ+プラグイン、(2)リーディング・デバイス、(3)オーサリング・ツール、(4)変換ツールが含まれると思われるが、ここに日本語組版機能まで入ればベストだ。なお、これを使って現実の様々なニーズに対応するには実装に依存する。レイアウトで言えばCSSで定義する必要があり、それが汎用化され、有償・無償のテンプレートやサービスとして登場するのは秋以降となるだろう。いずれにせよ、日本でこれまで使われてきたXMDF、ドットブックと並んでePUB 3がデファクトとして並ぶことになった。力関係はともかく、従来のコンテンツが新しい標準(デバイス)で読めるようにする必要があり、変換ツールが開発・提供されなければならない。  (05/24/2011)

Comments

  1. 日本語仕様の実装に関して、奔走された皆様、ご苦労さまでした。ありがとうございました。

  2. DAISYは決してアメリカ主導ではないですよ。ヨーロッパ主導ですし、presidentは日本の河村さんです。

    EPUB3の機能のうち、単にWeb技術をパッケージングしただけの部分は早期に実装されるでしょう。それ以外の部分がどうなるかは、正直ふたを開けてみないと分かりません。例をそろえるなどして、今後頑張ります。

    • 貴重なご指摘有難うございます。DAISYについては説明不足でした。公共性・社会性を重視するヨーロッパ、市場性を重視するアメリカの間のバランスをとる上で、河村さんはたいへんな活躍をされてきたと思います。言わんとしたことは、両立させることが重要であり可能でもあるということです。アクセシビリティは特殊な市場ではなく、一般市場のIF技術/商品開発でもますます意味を持ってくると考えています。

      EPUB3は幹と枝の関係がしっかりした本格的仕様ですから、実装へのアプローチも多様になると思います。実装を通じてさらに改善されていくはずで、今後さらに進化していくことを期待しています。ともかくこれで日本が(残りの)世界と同じスタートラインに立てたわけで、ご苦労された皆様には感謝しきれません。(鎌田)

Scroll Up