メディアの巨人がB&Nに買収提案 (♥)

ケーブルTVなどを中心とした米国のメディア企業、リバティメディア ( Liberty Media Corp. )は、 B&N に対し「友好的買収」の提案を行った。提示価格は発行済み株式の70%に対して約10億。 B&N は昨年ボーダーズを保有する投資ファンドからの「敵対的買収」に遭って見事に切り抜けたばかりだが、今回の買収提案は性格がまるで違う。前回が成熟産業の整理統合型であったとすれば、今回は業種間再編型と形容できる、非常に野心的なものだからだ。仕掛けたのは、ルパート・マードックと並ぶメディア業界の大立者、ジョン・マローン(写真)。幸か不幸かはともかく、書籍販売会社が米国のメディア再編の焦点の一つとなってきたことは、1年前なら驚天動地に聞こえたかも知れない。[全文=会員]

Nookの戦略的価値を高く評価

リバティが目をつけたのは、もちろん書店ではなくNOOK Colorを中心としたネットビジネス。とくにNook Storeで、わずか3ヵ月でAndroidタブレットの盟主となり、iPadの対抗と目されるまでに躍進したNOOK Colorで展開するデジタルコンテンツ事業の将来性が評価されたことになる。マローン氏とグレグ・マッフェイCEOは23日、投資家に対して戦略的意図を明らかにしたが、そこでは、(1)タブレット市場ではAndroid機が数的優位を獲得すると考えており、(2)E-Bookコンテンツで成功したNook Storeは大きな潜在力を秘めている、(3)B&Nの書店網の価値はボーダーズの破綻後さらに高まっている、といった認識が示された。

実現はそう簡単ではない。まず買収価格。17ドルという提示価格は15ドル近辺という実勢に比べて安くはなかったが、すぐに19ドル近くにまで跳ね上がった。投資家にとっても注目株となったからだ。B&Nの大株主で実業界の大物(民主党のスポンサーでスキャンダル王)ロン・バークル氏のYucaipa Co.が株式の追加取得に乗り出し、23日には19.7%まで買い増したことが明らかになった。だんだんと役者が揃ってきたことで、価格はますます高くなる。次にB&Nの創業者であるリッジオ会長の処遇。リバティは出版界におけるリッジオ会長のリーダーシップを高く評価し、引き続き止まってもらいたいとは考えているものの、条件面で折り合っていないとも伝えられる。さらに、今回の買収は投資案件ではなく、リバティとB&Nの事業戦略に絡むものだけに、リバティが70%を保有すれば当然にも独立性は失われる。誇り高いリッジオ会長が受け容れない可能性も強い。

リバティは売上100億ドルを超える帝国であり、ケーブルをキー・メディアとして通販、コンテンツ、広告、通信事業を幅広く展開してきた。本のネット通販から始めたアマゾンは、かつて(TCI当時)のマローン氏のような勢いで独自のエコシステムを築きメディアと流通を変えつつある。買収したメディア企業に付加価値をつけて高く売って利益を出すというのが、この20年ほどのマローン氏のスタイルだが、今回の買収において、おそらくマローン氏が最も意識しているのはアマゾンであり、本業の命運なのではないかと考えられる。 (05/24/2011)

参考記事

Scroll Up