アマゾン出版が「エド・マクベイン全集」刊行へ

アマゾン出版(Amazon Publishing)は6月22日、ミステリの大御所、故エド・マクベインの多数の作品の出版権を獲得し、近く刊行を開始することを明らかにした。1956年から2005年にかけて書かれ、絶版本を含む47作品から成り、ミステリ・ブランドとして立ち上げた「トーマス&マーサー」の看板の一つとなる。内訳は87分署シリーズ35冊、マシュー・ホープ弁護士シリーズ12冊(2012年)。嬉しいことは、これがKindle版だけでなく、印刷版(一部はオーディオ版)でも提供されることだ。このことは、アマゾンが原作者に十分な敬意を持ち、読者のニーズを知っていることを示すものでもある。E-Bookによって有名作家の埋もれた作品が日の目を見ることになる。同様の全集企画が続くことも期待できる。SFブランドでは何を看板とするだろうか。

エド・マクベイン(本名サルヴァトーレ・ロンビーノ。1952年にエヴァン・ハンターと改名, 1926~2005)は、日本では主に早川書房の邦訳「87分署シリーズ」で絶大な人気を誇る。エヴァン・ハンター名義でも10冊以上、カート・キャノン名義でもかなりの数を書いている。今後これらの膨大な作品をどこまでカバーできるのかなど、不明な点も多い。アマゾンとして「個人全集」企画は、愛書家の間に本格出版社としての名声を確立する上で最も有効な手段であり、これからも続くだろう。それに対抗して大小出版社も「全集」企画に乗り出し、E-Bookが「全集」ブームに火をつけることになればすばらしい。

講談社が初のデジタル版個人全集となる「五木寛之ノベリスク」の刊行を開始するというニュースは、数々の「震災電子書籍」とともに、デジタルで出来ることを実証するという意味で大きな意味を持つものだった。いかに有名な作家でも、膨大な作品群あるいは文章の中で、売れなかったものも少なからずあるし、そもそも本にならないものも多い。なかには原作者が愛してやまないものさえある。売れない本が再刊される可能性は多くない。リスクがほとんどないE-Book版は、こうした埋もれた作品を世に問う好機だ。  (06/23/2011)

本誌関連記事

Scroll Up