E-Book市場で、データとして重要なのは分野別の数字で、マンガとアダルト、辞書に偏る日本の数字が、欧米のものと直接比較できないのはそのためだ。出版年鑑で知られる米国のバウカー社は、2010--2011年の米国における消費者の購入行動に関するレポートを発表し、E-Bookにおいてはフィクションが、数にして61%、金額にして51%を占めたことを明らかにした(Publishers Weekly, 06/20)。販売数で第2位は児童書で12%、金額ではノンフィクションで14%だった。しかし、ノンフィクションでは自伝/伝記が目立つのみで、まだ十分に浸透していない。
E-Bookがとくに目立ったのは文芸/古典で20%(数量ベース)だが、これは大量の古典名作がパブリック・ドメインとして雑多なWebサイトを通じて廉価で販売されたためで、金額にすればそう多くないはずだ。少なくとも廉価な(あるいは無償の)古典名作がE-Bookへの入口になることで、デジタル読書人口の拡大に寄与していることがうかがえる。その他では、SF (19%)、宗教フィクション(16%)、恋愛(14%)、推理(14%)、一般小説(12%)、スパイ・スリラー(9%)といったところ。SFや恋愛小説はもともと廉価で量販される傾向があったものなので、E-Bookとは相性が良い。
E-Book効果でオンライン販売が初めて大手書店チェーンを抜く
いま一つ重要な傾向は、2010年にはアマゾンなどオンライン販売の数量が大手チェーンのそれを30%対29%で上回ったことだ。2009年には19%対37%だったのと比較すると劇的な変化が起きたことになる。消費者は印刷本とE-Bookコンテンツを同じオンライン書店から購入する傾向があり、E-Bookの販売増は、そのままオンライン書店の立場を強めている。米国で言えばアマゾンとB&Nが圧倒的に有利であったということになる。本誌の仮説だが、複数のフォーマットを扱う書店は、単一のフォーマットしか扱わない書店より有利になる、という傾向を立証しているように思われる。
バウカー社の調査は、PubTrack Consumerサービスを使って行われたもので、これは約40,000人の米国人を対象に本の購入行動を調査している。 ◆ (06/22/2011)