中小出版社と書店のE-Bookマーケティング

米国書籍商協会(ABA)がアンブライドルド・ブックス(Unbridled Books)と提携して行った、6月9-11日の3日間限定で25冊の書籍コンテンツ(Google eBooks)を各25セントで販売するプロモーションについて、ABAはこれが大成功だったと伝えている。このセールは、独自のプラットフォームを持たない独立系書店がE-Bookビジネスに参加できるかどうかを占うものとして注目されてきた。ABAはGoogle eBooksと提携することで書店が窓口を開設できるようにしたが、実際に一定数の顧客が購買を行う流れを確認する必要があったためである。

アンブライドルド社(UB)は、2003年に二人の編集者によって創業されたアリゾナ州ケーブクリークの文芸書出版社で、作家と書店との長期的関係を重視した活動を行っている。今回のキャンペーンは、UBのE-Bookを通じて書店と消費者が結びつきを強められるようにという意図から行われた。25冊の中には16点の新刊を含んでいる。販売はABA IndieCommerceに参加する書店を通じて行われた。UBの書籍は、ハードカバー定価で25ドル、市価18ドル、E-Bookで10ドルというのが中心的な価格帯だが、いずれにせよ25セントという価格は売上が目的ではなく、ターゲットとなる読者層にUBの本に親しんでもらうこと、書店とその顧客との関係づくりに貢献し、書店がUBへの好感度を高め、タイトルの販売に協力してもらうようにすることが目的と言える。

きめ細かいマーケティングで大手に対抗

そうした点では、キャンペーンの評価の基準は、地域ごとのマーケティング・データを得ることとは別とすれば、(1)ダウンロード数、(2)取扱書店数、(3)キャンペーン後の販売実績だと思われる。結果は発表されていないが、インディ・ブックストアへの注目を高めようとしたUBの意図は十分達成されたと見られる。印刷本とE-Bookのバランスを保ちつつ、独自のきめ細かいマーケティングで継続的な読者層を開拓していく必要のある中小出版社にとって、主力商品を3日間、事実上無償に近い価格で提供した「25:25」セールは、カネのかかる販促や広告では得られない成果が得られる。無償ではなく、中途半端な割引率でもなく、25セントとしたのはかなり賢明なように思える。

小説の読者は印刷本の最重要顧客で、一部は図書館のヘビーユーザーでもあるが、ジャンルや作家の傾向などに沿って慎重に購入する傾向があり、E-Bookを使うことで印刷本(とくにハードカバー)に誘導するマーケティングが課題となっている。実際、アマゾンも印刷本とE-Bookと古本の3つのフォーマットを扱うことで利益を最大化する方法論を確立している。オンライン・マーケティングは広大な市場をカバーできる反面、精度に限界があるが、独立系書店は狭い地域・分野に限って高い精度を実現できる。もともと顧客ベースも管理のノウハウも持っていないGoogleにとっては、独立系書店を含むエコシステムが、eBooksの成否を握っている。(鎌田、06/21/2011)

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