気になるニュース(市場予測)が入ってきた。米国のIT市場調査会社のIDCは、7月8日に公表した「メディアタブレットと書籍リーダに関する四半期レポート」で、2011年には5,350万台のメディアタブレット、1,620万台のE-Readerが全世界で出荷されるとし、前者については以前の予測値を下方修正。そして後者では、カラーLCDと電子ペーパーの2種類の製品を持つB&Nが、アマゾンを抜いてトップに立つと予測した。こうした予測は初めてのものだ。タブレットの予想が外れたのは理解できるとして、リーダについては少し考えてみる必要がありそうだ。[全文=♥会員]
NOOK ColorはE-Readerかタブレットか
今年はiPad 2を先頭に、それを追うAndroid機なども勢揃いするタブレットの年と言われ、各社とも年初からかなり途方もない数字を予測していたが、Q1の数字は対前期比28%減の720万台と期待を大きく裏切った。理由についてIDCは、(1)景気の低迷による需要の弱さ、(2)部品供給上の問題をあげているが、ノートPC/ネットブックと重複する$400~$600という価格レンジでは、メディアプレーヤーにそう多くの市場を期待すべきではなかったのではないか。アップル・ファンを中心に需要が一巡した後、落ち込んだのは、外的要因よりは、まだタブレットが非メディア用途でPCを脅かす汎用性を獲得していないことを示していると思われる。
さて、タブレットのような汎用製品の出荷台数については比較的正確な数字が発表されるのに対して、オンライン書店の専用リーダの出荷台数は、企業側が厳重に情報をコントロールしているので、調査会社による推定に大きな開きが出てくる。IDCは1Qには前年同期比で105%増の330万台が出荷されたと想定した。この見積は、他の調査機関と比べるとかなり低目に出している。
昨年末にNOOK Color (NC)を投入してヒットさせ、先月はSimple Touch Readerで高い評価を受けたB&Nが、月間数10万台のペースを持続している可能性はある。それにしても、全世界の出荷が24%増の1600万台にとどまりながらNookがトップに、というのは考えにくい(筆者はIT系の調査会社の数字をあまり信用していない)。さらに、NCが$250という低価格タブレットとして人気を博したとしても、iPadと同様、実質的に活字コンテンツ・リーダとしては使われてはいないということだ。NCのヒット・コンテンツはiPadと同じく本ではない。これではコンテンツ市場に影響を与えるものではなく、B&Nのビジネスモデルとして完結しているわけでもない。
そしてアマゾンのタブレットが間もなく登場するはずだ。NCと同等以上の機能を持ってはいても、アマゾンはこれをE-Readerとは呼ばず、Kindleには並べないだろう。だから姿形がメディアタブレットのようで、専らそうした使われ方をされるのならば、それはメディアタブレットに分類すべきだ。分類を乱して間違ったシェアを計算すべきではない。 ◆ (鎌田、07/14/2011)