「教育クラウド」としての韓国・教科書電子化

韓国政府は6月29日、2015年までにすべての学校教科書を電子化する「スマート教育推進戦略」を発表した(→韓国聯合ニュース)。投入する国家予算は総額2兆2,281億5,000万ウォン(約1,676億円)で、クラウド・コンピューティングとモバイルデバイスを通じてコンテンツ配信とサービスの提供を行う。たんなる教科書の電子化ではなく、「21世紀の知識情報社会が要求する知能型教授・学習体制の実現」という戦略目標を掲げているのが特徴となっている。

クラウド・コンピューティングのグローバル・リーダーを目ざす

本計画は、韓国教育科学技術部と国家情報化戦略委員会が作成した。このデジタル環境により、学習者は各学校が管理するクラウド・サーバに備えられたオンライン・リソースにアクセスし、個別ニーズに最適化した学習パターンに基づくサービスが受けられる。提供されるデジタル教材は、教科書、参考書、問題集、辞典、ノート、マルチメディア資料などの機能を連携させたものという。生徒は教科書の購入費用とともに重い紙の教科書を運ぶ負担から順次解放される。計画では2014年までに小学校教科書を完全に電子化し、翌2015年に中高等学校の電子化も完了するとしている。本計画は2015年までにクラウド・コンピューティング分野での世界的リーダーになるという戦略目標の一環として発表された。

教科書の電子化は、米国でも各州が主体となって急速に進んでいるが、悪化する財政問題への対応が緊急の課題になっているために、サービス・プラットフォームは様々なものがある。韓国では国家レベルでの教育用クラウドを構築する。つまり、韓国のアプローチは、教科書やデバイスといったモノよりも教育サービス環境を重視している。日本では「教科書電子化」を入口にしたために、ここでも「紙か電子か」という不毛な議論が繰り返され、暗礁に乗り上げている印象がある。世界の教育関係者の間では、デジタル教科書は個別・協調学習という21世紀の教育理念と学習環境を実現する手段として重視されている。

他方で、この10年間の韓国のIT基盤の充実は目覚ましく、モバイル/ブロードバンド環境の普及では世界のトップを行く。しかし、クラウド・コンピューティングでは米国の巨大企業が世界市場を席巻しており、韓国としては国家レベルで「クラウド」の構築・普及を重視する戦略を採った。教育は国家が関与する事業としては最大規模のものであり、最大のアプリケーションとして選ばれたものとみられる。韓国のアプローチは、国家が直接教育に関与する国では標準的に採用するものとなる可能性が強い。そこでコンテンツとサービスを合わせた「教育クラウド」が巨大市場として成長していくだろう。韓国の「クラウド」戦略は、そうしたグローバリゼーションを見据えたものである。 (鎌田、07/05/2011)

Comments

  1. クラウド戦略云々に関してはオバマさんのコピーのように思える。バックボーンの容量からしても韓国がグローバルな好位置には居ない。OSの仮想化が得意とも思えない。優位は低消費電力ARMやキャッシュメモリの生産くらいか? 

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