J.K.ローリング女史が『ハリー・ポッター』シリーズE-Book版の販売を専用サイトPottermoreを通じて行う、と発表したことは大きな波紋を引き起こした。億単位の潜在読者を持つ超人気作家による直販は、デジタル化によって進行してきた「中抜き」の究極の姿を示したわけだが、それは何よりも過去3年間、アマゾンを中心に築かれてきたE-Bookビジネスに大きな影響を与える。その影響は、100万人に対する先行配信が開始される7月末には確認できるだろう。アマゾンKindleの最大のライバルは、いまやアップルでもB&Nでもなく、一人の作家、そして将来的には作家たちである。[全文=♥会員]
Kindle vs. Pottermore:コンピュータが勝てない魔法
なぜローリング女史がライバルとなるか? それは7部作を中心とした最強のコンテンツと、世代にまたがる100万単位の熱狂的読者、1,000万単位の愛読者と億単位の潜在読者を持つことによって、Pottermoreが巨大なビジネスとなることを約束されており、しかもアマゾンを含むすべてのプラットフォームに1セントも落とさずに、それらに協力させつつそれらを利用することになるからだ。クラウド時代には、顧客(読者)を持つ作家は、それ自体がプラットフォームなのだ。出版界にとって、これはアマゾンとKindleの登場以上の衝撃かもしれない。喩えは古いが、中東産油国が国際石油資本を凌ぐ力を持つことを見せつけた1970年代の「オイルショック」に匹敵する。
周知のように、『ハリー・ポッター』シリーズは、1997年以来印刷版で4.5億冊を販売してきた。これを読んで育った最初の世代は、もちろんインターネットとSNSの活発なユーザーであり、デバイスを購入する年代に達している。Pottermoreは彼らのSNSの中心になり、全世界の無数のコミュニティと1,000万人単位のファンをネットする。それが巨大な媒体価値を持つことは間違いない。Pottermoreは、キャラクターに依ることなく、原作が持つ「コンテンツ×コンテクスト」の力によって商業メディアとなることができるだろう。その力は、出版社や書店に依存しないものだ。
PottermoreのCEOは、KindleやiPadを含むすべてのデバイスで利用できるように交渉していると述べている。つまり、「Kindleストアを利用せずにKindleで読める」ようにしてほしいということだ。フォーマットはどうなるか。PDFならこういう言い方をしないだろうから、この意味は「Kindleのフォーマットでも」ということを意味する。ファンはKindleであろうとiPadであろうと、『ハリー』が読めないデバイスは買わない。ほとんどは、わざわざ変換して読んだりもしない。E-Bookビジネスは、非正規な形で『ハリー』の別格性を認めて無料で受け容れるか、それとも通常の商品コンテンツとしてのみ受け容れるかを決めなければならないのだ。後者は自殺行為となる。(次ページに続く)
日本でなら、どういうコンテンツに同様の可能性があるだろう、と考えた。日本だとコミックか。しかし世代を超えて、とはいかないだろう。
ジブリ。ジブリを核に、日本発、世界へ向け、また世界と交流する、ネット世界を構築できないか。
できると素敵だなと思います。