エージェンシー価格制でアップルと大手版元5社を集団提訴

E-Bookのエージェンシー・モデル(元売りが小売価格を決定する代理販売制)は、独禁法上の問題も調査されているが、8月9日、アップルと“ビッグシックス”の大手6出版社に対して、北カリフォルニア地区連邦地裁に集団訴訟(クラス・アクション)が提起された(→リリース)。法律事務所のハーゲンス・バーマンが窓口となったもので、被告が共謀してアマゾンなどによる割引販売を不可能にして小売価格を引上げ、消費者の利益を損なったというもの。詳細はこの文書で知ることが出来る。

今回の訴訟で被告になったのは、アップル、ハーパー・コリンズ、アシェット・ブックグループ、マクミラン、ペンギングループ、サイモン&シュスターの6社で、後からモデルを採用したランダムハウス社は入っていない。リリースによれば、原告はカリフォルニア州とミシシッピ州の二人の市民で、提訴は「E-Book購入における損害賠償とエージェンシー・モデルに基づく価格設定の差し止め、競争阻害行為の結果生じた不当な利得数千万ドル分に対する罰金」を求めている。アップルを原告に含めたのは、出版社が共謀者としてアップルを必要とし、またアップルもiPadの発売に際して、市場で支持を得ていたアマゾンのKindleを無力化する手段を必要としていたためだ、とバーマン弁護士は述べ、これらを法廷で立証するとしている。

判決より前にエージェンシー価格制が消える可能性も

Googleに関する訴訟にみられるように、クラス・アクションの審理は公聴会などを伴うために長期化するのが通例であり、今回の訴訟も最低で5年、場合によっては10年はかかり、途中で和解に移行する可能性も十分にある。しかし、懲罰的賠償(punitive damage)は被告の事業規模、支払能力によって巨額なものとなる可能性があり、経営に少なからぬ影響を与えた例も少なくない。アップルの「共謀」が認定されれば、賠償額の桁も上がる。だから日本の消費者訴訟のような軽い話ではない。

ブロガーは、この訴訟に対して概して否定的で、判決が出る前にエージェンシー・モデルは消滅すると考えている。ストアが小売価格決定の主導権を取るシステムは、(競争を通じて)大手への寡占を招きやすい。少なくともアマゾンのライバルは価格競争に耐えられないだろう。他方で版元による小売価格の硬直化は、市場との対話による最適価格形成(売上の最大化)を阻害するので、著者のためにはならず、市場は閉じていないので結果的に誰も儲からない。大手出版社が価格問題に精通することによってエージェンシー制から離れる可能性も少なくない。  (鎌田、08/11/2011)

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