インディーズE-Bookストアはブームを起こすか (♥)

エミリー・グールドとルース・カリーの二人の女性が、最近ニューヨークで立ち上げたE-Bookストア、エミリー・ブックスは「私たちの愛する独立書店文化を守るのにふさわしい方法で」E-Bookを提供する。たんなる小売店ではなく自主出版も行うが、インディーズE-Bookストアの先駆けとして注目されている。それは、このストアが価値観を鮮明にし、作家で編集者も経験した店主の眼鏡にかなった新書と絶版本を扱い、コミュニティを背景にしているためだ。この店は「ニューヨーク」という特異な地域文化を発信している。このローカル書店は、グローバルと結びつくだろう。 [全文=会員]

フェミニスト作家の自主出版本でスタート、月1点のスローペース

エミリー・ブックスが現在販売しているのはわずかに1冊、フェミニズムの活動家、作家、ロック評論家、エッセイスト、大学教授として最近まで活躍した故エレン・ウィリス(1941-2006)の文化評論集 "No More Nice Girls" ($14.99)だが、これだけで十分な説得力がある。ウィリス女史は、1960年代からニューヨークを中心とした各種メディア(New Yorker、Village Voice、Rolling Stoneなど)の常連ライターとして幅広い分野で活躍し、多大な影響を与えた。とはいえ、一貫してラディカルだったので、大手出版社は扱っていない。二人はすでに絶版となっていた原著(1992, Wesleyan University Press)の電子化権を獲得し、問題なく復刊することができた。当面は毎月1点のペースで販売していく。おそろしくスローだが、当面は一つのタイトルに集中したいという。

彼女たちは、現在入手可能な本とそうでない本、フィクションとノンフィクションを扱い、読者が知らなかった本を紹介することを計画している。売り方は、単品売りのほかに、毎月1冊を配本する定期購読(月払い$13.99、年払い$159.99)もある。後者は、編集者として膨大な本を読んできた店主たちが、とくに読ませたいと考えた本だ。信頼できる読み手から薦められなければ、自分から読むことがない本との出会いの機会を提供してくれると思えばよい。満足できなければキャンセルできる。購読者は順調に増えているという。

コンテンツは、Kindle用のMobiとNookやiPadなどで読めるEPUBの2種類で提供される。購入者にはメールでリンクを送ってダウンロードしてもらうシンプルな方式で、「プラットフォーム」などは持たない。本人確認も何もできないが、敢えてDRMは付けていない。DRMは高価ではあってもコピー防止の効果はなく、しかも紙の本ではふつうにできることが制約されるためだ。

本好きがやる本屋:本物のキュレーションの時代

昔から「本好きが本屋をやると失敗する。」と言われてきたが、それは家賃や万引きなどのコストが馬鹿にならないためだ。E-Bookストアは、店舗のロケーションは問題にならず、何よりも1冊1冊の本(の中身)と読者に集中することができる。エミリー・ブックスは「品揃え」を最重視する通常のオンラインストアとは対極の発想をする。もちろん、ベストセラーでも出ない限り、大きな売上など見込めないが、店主たちの生活は十分に成り立ち、活動を拡大させていくことは可能だろう。それによって「独立系書店文化」は継承される。この伝統的文化は、本の読み手で目利きであるキュレーターとしての店主と客とのコミュニケーションで成り立つ。アマゾンやアップルが提供するロボット・キュレーターは何億人を相手にするが、インディーズ・ストアは、せいぜい数百人、数千人でよい。本好きだから、元手も要らず(ことによると道楽半分で)できる本屋ということだ。

デジタル時代に著者と読者の間で成り立つビジネスは、多種多様なものであり得る。日本の江戸時代の「本屋」は、出版、取次、小売を兼ね、新刊、古書、なんでも扱い、価格は自由に設定した。インディーズ・ストアは、同じように何でもできる。E-Bookのほかに、印刷本の新刊と古書を同時に扱うことも出来る。重要なことは「本の目利き」としての評判と「客を見る目」が、一定の範囲で確立されていれば成り立つということだ。そして個別分野に強いインディーズは、仕入や流通に関して連携することが出来る。水平分業的なシステムも可能だ。アマゾンはたしかに大規模ストアのスタンダードをつくったが、それにこだわる必要はまったくない。 (11/03/2011)

参考記事

Comments

  1. セレクトショップというより、むしろブッククラブの延長線上にある印象を受けます。

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