2012年タブレット市場展望:「7型」と「低価格」

アマゾンKindle Fireの衝撃のデビューによって、市場の関心はアップルの反応に集中している。キーワードは「7型」「低価格」である。前者に関する噂は、アップルが7.85インチ・パネルの発注を行っている、と台湾のDigiTimesが報じたことによって一気に強まった。価格は$299$349で、これによってアマゾンの快進撃にブレーキをかけるとともに、小型タブレットという新興カテゴリーでKFが圧倒する事態を阻止しようとするだろう、というものだ。いずれにせよ、この市場は当面対照的な戦略を採る二つのAを両極として動いていく。

ジョブズの「遺戒」を超えて進むアップル

1Q12(通常は3月)は、アップルのミニサイズとアマゾンのフルサイズの話題で沸騰することになりそうだ。後者については、例によって徐々にリーク情報が出てくるだろうが、ホリデー商戦が終わる年明けまでは厳重に管理されているものと見られる。当面の注目はアップルの8インチだ。ジョブズはあり得ないとしたことだが、製品デザインに関しては常識人であるティム・クックCEOは、市場があるならば出すべきと考えるだろう。Android陣営に全面戦争を仕掛けることと同様、不合理な選択はしないはずだ。メディアはもとより、投資家も、ファンも、開発者も、iPhone、iPadのアスペクト比を継承する8インチに歓迎す以外の反応を示すとは考えにくい。宗祖の遺戒はやがて忘れられる。

現在、500ドル以上であるiPadの製品ラインを複線化することは自然な判断だ。来年2月にも予想されているiPad 3は、2048×1536の超高解像度(現行製品の4倍)を採用すると推定されている。サムスンは11.6型で2560×1600という、同じ画素密度で大型の新製品(CPUは2GHz級)を用意していると言われており、ハイエンド・タブレットが画面のハイスペック化に進むトレンドがある。かつて困難であった、このレベルのパネルと画像処理は、すでにスマートフォンで製品化されており、なんら驚きではない。しかし、コストは従来のパネルよりは遥かに高いはずなので、500ドルという基本ラインは維持するとしても、価格を下げてiPad 2を継続するという選択肢がでてくる。これも常識的にはベターな選択だ。350ドルのiPad 2は、なお十分な商品価値があるからだ。おそらく市場はそれを見込んでiPadのほうは買い控えていると思われる。

そう考えると、(1)ハイエンドのiPad 3と、(2) 普及版のiPad 2、(3) パーソナル/モバイル版の8型iPadミニ(?)という3種類のバージョンを持つことになる可能性が高い。問題はタイミングで、(1)と(2)を1Q12に出して、(3)を3Q以降とするか、それとも(3)を先に出すか、という選択肢となるだろう。前者の場合には、Kindle Fireの10インチ版を迎撃する形となり、後者の場合は逆に追撃する形となる。KF-10がMirasolのカラー電子ペーパー・パネルを搭載してくると面白い。

アップル、アマゾンを両極に動くも、Windows 8、WebOSにも注目

2012年のタブレット市場は、今年以上に面白い展開となる。機能/性能と価格帯で様々なカテゴリーが生まれ、それぞれが最適な用途市場を見出そうとするだろう。IHS iSuppliが12月2日に発表したレポートによれば、Q4にKindle Fireで参入したアマゾンは、390万台を出荷して、シェア13.8%の2位にランクインした*。アップルは1,860万台あまりで65.6%を確保。サムスンは4.8%で3位、B&Nが健闘して僅差の4位といったところだ。ソニーや東芝は「その他」に含まれているものと思われるが、なんとも寂しい。アマゾンの参入などによって、2011年の出荷台数は、8月時点のiSuppliの予想(約6,000万台)を7.7%上回る(6,470万台)と推定している。対前年比で273%増だが、来年は100%あまりの増加で1.5億に近づき、それ以降も二桁成長は続いて2016年に3億台に近づく、というのが同社の予想だ。

*アマゾンKFの4Qの数字は、400万台から600万台までバラつきが甚だしいが、iSuppliは最も小さな数字を採っている。大きい数字を前提とすれば4Qのシェアは20%あまりとなる。

なお、同レポートではKindle Fireの製造コストを、販売価格の199ドルを2.7ドル上回る201.7ドルと推定しており、コンテンツや物品の販売で赤字分をカバーし、収益を上げるものと想定している。デバイスで十分な利益を上げ、なおかつコンテンツでも収益を見込むアップルとの対比は鮮明だ。その中間に、デバイスで確実に利益を上げなければならないタブレット・メーカー(大部分はAndroid)がいるという構図なので、市場はアップルとアマゾンの両極構造を中心に展開することになる。

筆者としては、12年で明確な数字が出るかどうかは不明だが、“ビジネス・タブレット”市場を開拓することが期待されるマイクロソフトのWindows 8の登場に注目し、さらにオープンソースとなったWebOSの復活もあると見ている。タブレットがPCに匹敵し、かなりの領域で取って代わるには10年以上はかかるだろう。しかし、特定のOSが圧倒的な支配力を持つことにはならない。HTML5以降のWeb標準は、OSによる囲い込みを時代遅れにすると考えているからだ。E-Readerもそうだが、筆者が考える市場規模は一般の予想よりかなり大きい。Koboを手にした楽天を含む日本勢には、長期的な視野をもって挑戦して欲しい。  (鎌田、12/21/2011)

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