EPUB3固定レイアウト仕様標準化に向けてスタート

日本電子出版協会は11月30日、EPUB最新動向セミナーを開催し、10月末に開催されたIDPF EGLS台湾会議を中心とした最新動向を紹介した。とくにJEPA技術主任が報告した固定レイアウトに関するワークショップは、EPUB3の最も重要な拡張につながるものとして、世界の出版業界が最も注目していたミーティングだった。本記事ではこの報告の内容について概要を紹介しておきたい(詳細は別の記事で取上げる予定)。

セミナーの冒頭で挨拶に立った総務省・情報流通振興課の松田統括補佐から、「EPUB日本語拡張仕様策定プロジェクト」が政府の知的財産戦略本部の「今年の8大成果」に選ばれたことが発表された。これは日本語に対応したEPUB3への評価が、政府全体に及んでいることを示すものとして注目される。

10.25 固定レイアウト・ワークショップの概要

  • 参加:約50名(IDPF非会員も含む)+20名(遠隔)、 ビル・マッコイIDPFディレクター
  • ファシリテータ:村田 真(JEPA技術主任)
  • プレゼンテーション:AAP、アップル、ソニー、B&N、富士フィルム、インプレス

EPUB3は10月に確定したばかりだが、市場で様々に使われる技術の基盤となるIT標準は、絶えず改良・拡張の要求が発生し、標準化コンソーシアムの技術スタッフ(といっても会員のボランティア)はこれに対応しなければならない。通常はニーズや実装が未成熟で、直近の大改訂に収めきれなかった機能があり、また仕様記述の不十分さが明らかになる場合もある。EPUB3の場合は、モジュール毎に拡張していくことになっており、辞書、索引、適応型レイアウト(Advanced Adaptive Layout)、固定レイアウト(Fixed Layout)などが拡張機能の候補になっている。なかでも、市場(出版社)のニーズが最も強いのが固定レイアウトだ。このワークショップは、新しい作業をスターとさせる予備会議のようなものだが、ここで合意された方向はその後の流れを左右する。

なぜリフローの標準であるEPUBに固定レイアウトか、という疑問をお持ちの方も多いと思うが、PDFや画像では重過ぎ、HTML5などで可能な様々な機能が制限されるので、iBooksなどでも独自の拡張を行ってニーズに応えている。漫画だけではなく、絵本、料理本、実用書、パンフレットなど、これを必要とするジャンルは多岐にわたる。標準化の必要は、様々なニーズに対して様々なアプローチで実装が登場した段階で生じることが多いが、固定レイアウトはその典型といえる。米国出版社協会(AAP)は、このワークショップに対して要求書を提出し、Skypeで議論に参加している。そこでは、「方式を一本化するべき」としていた。これは非現実的な提案といえる。村田主任によると、現状で固定レイアウトを実現する方式としては、HTML/CSS位置指定を使うもの、SVG言語を使うページ指定、画像のレンディション・マッピングなどがある。最後のものは、日本の多くのマンガやB&Nなどで使われている。(右はアップル iBooks)

村田氏はこのワークショップのファシリテータを務めたが、このポストは議題のコントロールや、実現技術の分類と整理、役割分担などを行う、戦略的にはきわめて重要な意味を持っている。同主任の満足げな表情からして、結果が満足すべきものであったことがうかがえた。ラフな合意事項としては、(1)複数の実現方式を排除しない、そのために (2)CSS、SVGによるもののほか、新たに画像のレンディション・マッピング方式を導入する、 (3)宣言方式はソニー案をベースに語彙を拡張する方式で行うとして要約されている。

これにより、次のアクションは、専門のWGを設置することだが、市場のニーズが強いので、作業はかなり高速で進むことになりそうだ。WGではWorking Draftの作成作業に入り、ここで完成度の高い仕様が出来れば、フォーマルな採択を待たずに実装が登場することになりそうだ。このあたりの展開は、提案の一本化が出来るかどうか、強硬な反対意見が出るかどうかなどに左右されるので、これからは目が離せない。 (鎌田、12/01/2011)

Comments

  1. いま行われているバトルについては、

    http://code.google.com/p/epub-revision/wiki/RenditionMetadataAdHocGroup

    のcomment欄を参照。

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