電子産業を専門とする調査会社、IHS iSuppliが12月15日に発表したレポートによると、2011年の専用E-Readerの世界出荷は、メーカーの低価格政策もあって2,710万台に達し、前年の1,300万台の2倍強(108%)となった。しかし、タブレットの急増もあって、この騰勢も長くは続かず、2014年をピークに減少に転じるものと予測している。ゲームを変える要素としては、カラー電子ペーパー製品の普及と教育市場の立ち上がりが指摘されている。
iSuppliは2014年、4500万台弱で飽和と予測
iSuppliのレポートは言う。「出荷の増加は2、3年は続くが、専用E-Reader市場の増加率は急減速する。例えば、2012年の増加率は3分の2あまりも減って37%、台数は3,710万台となる。」
同レポートが今後の成長分野としてあげているのが、教育で、とくに韓国のKyobo書店が発売したクァルコム製カラー電子ペーパー搭載の製品に注目している。教育現場での使用には、長い電池寿命とカラー表示がほぼ必須となるため、価格しだいでは大きな市場が見込める。KyoboのE-Readerは、5.6インチでXGA表示(225dpi)、価格は349,000ウォン(約2万4,500円)だ。
現在、ロシア政府などでもカラー電子ペーパー製品を試験的に使用を開始しており、本格化すれば大きな市場となるだろう。教科書の印刷・製本・配布コストを低減し、教育内容を現代化するという教育情報インフラに関するイニシアティブは、世界的なものであり、これまでの商業出版市場とは異なった普及パターンとなると考えられる。iSuppliは、クァルコムのMirasolを初めとするカラー電子ペーパー製品が「ゲーム・チェンジャー」となる可能性があるとしながらも、この数年に限れば不透明、としている。
E-Readerは、これまで「読書端末」というイメージが強く、あまり注目されてこなかった。特に本を買うことの少ない日本では、その市場性さえも十分に評価されてきたとは言えない。しかし、タブレットがそうであるように、E-Readerも数年で底を見せるような市場ではない。市場も用途も複数存在し、まだ十分に開拓されていない。現在見えているのはほんの一部に過ぎないのである。その点については、別の記事で検討しているので、参照していただきたい。 ◆ (鎌田、12/21/2011)
参考記事
- E-Readerが5年以内に飽和しない3つの根拠(♥) [本号=会員向け記事]