2012年E-Book出版の最大の課題は「品質」

出版社などに対して文書データの変換サービスを提供しているニューヨークのDCL社(Data Conversion Laboratory, Inc.)は12月27日、米国の出版業界関係者を対象として行った調査の結果を発表し、411人の回答者の70%が、E-Bookの出版において「品質」を最重要な課題と考えていることを明らかにした。また、2012年にE-Bookの出版を計画しているのは63%であった。

誤植と粗悪なレイアウトはもはや許されない

DCLのマーク・グロスCEOは、とにかくデータを揃えることに関心が集中し、品質など二の次だった頃1年半前に比べて、市場が大きく変わったとして「この調査の結果は、消費者が15ドルもするE-Bookで、まずいフォーマットや誤植を許さないということを出版界が認識していることを示している。」と述べている。品質重視とともに重要なトレンドの変化は、ノンフィクションや技術書の出版への関心の高まりで、回答者の64%が関心を持っている。これまでのE-Bookはフィクションが中心で、実用的なものからは遠かったが、ビジネスや技術など実生活に密着した分野へとE-Book読書が拡大していることを示している。

E-Bookの品質問題―つまり誤植と粗悪なレイアウト―は、昨年から関係者によって指摘されてきたが、目だって改善したという話は聞かない。これは日本も同様だが、以下のようなことが背景にある。

  • デジタル版の製作プロセスが未成熟
  • CSSスタイルなど製作環境が未整備
  • デバイスの毎のフォーマットや画面サイズの違いに対応できていない
  • 編集者の意識がまだデジタル版に対応していない(概して無関心)

例えば、現在の製作スタイルは、ワープロやDTPのデータをE-Bookフォーマット(多くはEPUB2)に変換し、画面でチェックしながら手作業で修正を繰り返すというのが、なお一般的とされる。一定の判型のページを前提に、かなり精緻に組まれたデータを、一定しない画面で表示されるリフロー式のデータに変換すれば、多くの問題を生むことは当然であり、変換ツール(まして人間の注意力)でカバーするにも限界がある。

調査によれば、出版社の43%は、iPadやKindle、Nook (EPUB)やカスタム・フォーマットなど様々なデバイス間での互換性の重要性を理解している。興味深いのは、iPadを好むのが44%で、Kindleの36%を8ポイントも上回っていることだ。これは出版市場での実勢とは異なるが、iPadを好む関係者が多いことを示している(これは別の調査でも確認される)。Kindleのシェアがこれ以上高くならないことを期待しているのかもしれない。  (鎌田、12/28/2011)

E-Book出版における優先課題(重要度1>5, 左から、コスト、正確性、期間短縮、カスタマ・サービス)


出版したいコンテンツ(多い順に、技術文書やマニュアル系、ノンフィクション、テキスト、フィクション)

採用したいフォーマット(多い順に、主要なもの全部、EPUB、専用、Kindle)


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