書評サービスのBlueInk Reviewは、Publishing Perspectivesと提携し、毎月の優良図書紹介記事を提供することを明らかにした。クラウドソーシングものが多い中で、ブルーインクは、NYタイムズやワシントンポストなど高級紙でも書評を書いたことがある専門の書評者が担当する。有償だが、評価は客観的なものという。
プロフェッショナルな書評を有償で作成、掲載するサービス
ブルーインクは、大手日刊紙で書評欄を担当した経験を持つ編集者のパッティ・ソーン氏(写真下)と著者エージェントのパトリシア・ムースブラッガー氏によって始められた。書評を提供するメディアには、商業出版社からのゲラ(見本)が山のように届き、書評者はわずかな稿料(彼女の知るケースでは1本20ドル)で多くの本を分担する。毎月300タイトル余りの中で選べるのは20あまりで、とても玉石混淆(というよりはほとんどが石ばかり)の自主出版本にまで手は回らない。そこで思いついたのが、有償の書評サービスだ。
ブルーインクは、既存の書評メディアでの書評を書いた実績あるライターを擁しているが、多くは著述家や編集者など、出版のプロであり、厳密な書評の何たるかを弁えているが、ブルーインクも書評における審査・評価・執筆の指針を公開している。利害相反の回避(著者との個人的関係、出版企画への関わりなど)規定もあり、日本のメディアにないものも少なくない。自主出版者は書評料を前払いし、書評に満足できなければサイトへの掲載を拒否することができる。依頼する際の料金は、スタンダード(7-9週)で395ドル。ファストトラック(4-5週)で495ドルとなっている。PDFで送稿する場合は、追加で$19.95の手数料がかかる。
書評者はプロフェッショナルな書評を書き、業界標準的な報酬を受け取る。優れた作品はBlueInk Best Bookのリストに載せるが、これまでに大手出版社や著名な著者エージェントの注目を惹いた作品が出ている。また図書館もブルーインクの推奨図書を購入する。
書評は出版の重要なインフラ
本を売るには書評が不可欠だ。それは自主出版でも同じだが、書評メディアで扱ってもらえる可能性は非常に小さい。コミュニティによるピア・レビュー(査読)は一般性に欠け、クラウド・ソーシングは厳密性に欠ける。ということでプロによる書評は自主出版のレベルアップにとって重要なサービスと思われる。
書評は出版における重要なインフラであり、プロフェッショナルな品質を維持した書評メディアがこうした形で展開すれば、隠れた傑作、佳作の発見が促されるだろう。ブルーインクのビジネスモデルは不明だが、シンディケーションによって「プロによる自主出版メディア」としてのプレゼンスを拡大し、それによって出版業界に対してサービスを提供することが可能となる。現在は、264タイトルの書評が掲載されている。 ◆ (01/17/2012)