米国の出版業界にとって「クリスマスの後の2週間は、カボチャにとってのハロウィーン前2週間のようなもの」というアナリストの声を、USA TODAY紙(01/09)が伝えているが、E-Bookのダウンロード数は期待通り上昇した。人々の外出が減るこの時期に、自動更新される販売レポートを眺めるのは、出版関係者にとって愉快なものに違いない。日本の出版社と消費者が、ともに「本の季節」を楽しめるようになるのはいつか。
E-Bookは出版市場を活性化させ、毎週発表されるベストセラー・リストへの関心を高めている。新しい集計システムで一新された有力紙の読書欄は、つねに多くの読者の目を惹きつけるものとなった。年末最終週のランキングが特に注目されたのは、もちろんギフト商戦の目玉となったE-Reader/E-Bookの効果だ。USA TODAY紙のベスト50チャートは、紙と電子の合計を載せているが、昨年最終週では50冊中42冊が電子版が紙を上回ったことが明らかにされた。それ以前のピークは7月に記録した25点で、それ以外は10冊台で安定しているから、これは急激な変化と言える。フォレスター社の推定では、11月下旬にリリースされたKindle Fireは500万台、B&NのNook Tabletは200万台が販売されたとされるが、これらを通じたダウンロードが、最終週のチャートを熱くしたことは間違いない。
2011年のデジタル比率が、前年の7%台から一挙に20%に達したことは確実と見られる。これを「まだ8割は紙の本」と考えるか、「1年もすれば半分は電子」と考えるかは、立場によって異なる。多くの人は紙の本を愛しているし、単純に切り替えが進んでいるわけではない。アマゾンでは、紙の本も伸びてはいるのだが、E-Bookの伸びが速いのだと説明している。B&Nの書店チェーンでも、印刷本の販売は過去5年間で初めて4%の上昇をみた。いずれにせよ、消費者は選択の自由を享受している。そして出版社にとって重要なことは、出版業の売上が伸びて、より多様な出版物が可能となることだろう。そのためには、製作とマーケティングのプロセスを再構築する必要がある。 ◆ (01/12/2012)