第2弾の点火へ、転機に立つ米国市場 (♥)

本誌では、米国における2009-2011年のE-Bookの爆発的成長は、本というものが印刷本と従来型出版の重力圏から離脱するための推進力を与えたと考えている。出版の重力はとてつもなく大きかったが、アマゾンのプラットフォームはついに離脱に成功し、他のサービスもそれに続いた。その次に来るものは、安定成長だろうか、それとも別の惑星への自由な飛行だろうか。最新の調査は、米国の出版関係者が、これまでのような直線的な成長が終わりつつあると感じていることを示している。[全文=会員]

E-Reader普及→E-Bookの成長→出版市場拡大の関係は弱まる

リーディング・デバイスの普及が必ずしもE-Bookの販売に直結しないことは、すでにiPadで経験済みだが、出版社は専用のE-ReaderとE-Book読者の相関もしだいに低下していると考えていることが、昨年末に行われたDigital Book Worldとフォレスター社の調査で明らかになった。昨年もE-Readerの普及は急速に進んだが、出版社は単純に喜ばなくなってきた、とレポートは伝えている(DBW, 01/12)。

調査は、合計で米国の出版売上のシェア74%を占める出版社の関係者からのインタビューに基づいている。読者の状況は改善すると考えるのは回答者の61%で、2010年調査の74%から13ポイント低下した。デジタル効果による読者数の増加を見込んでいる回答者は66%から60%に低下、将来の読書量の増加への期待に関しては、2010年の66%から47%と低下し、半数を割った。

出版アナリストのマイク・シャツキン氏は、短期的には入手が容易で、常時携帯が容易という2つの理由で、デジタルは本の消費を高めるが、TVやゲームも楽しめるKindle FireやNook Tabletでは読書の比重は小さくなると指摘する。ハーバード大学バークマン・センターのデイビッド・ワインバーガー上級研究員は、リーディング・デバイスの普及で、ダウンロードする間隔はますます短くなるが、読むコンテンツも短くなっていると述べ、必ずしも本の消費量増加に結びつくものではないとしている。

米国(英語圏)の出版関係者の認識は、日本のそれとはおよそかけ離れている。日本でも同じような調査をして欲しいのだが、本の消費量は増えるか、本を読む人の数は増えるかと聞かれて肯定的に考える人はとても少ないだろうし、まして印刷本への影響を病的に怖れている現状では、E-Bookが読者数を増やし、読書量を増やすかと聞かれても、質問の意図すらすぐには理解できないかもしれない。3年前は米国でもたいして変わらなかったと思う。ほんの数年で日米の出版界の状況ははっきりと分かれ、あちらではE-Bookのブームに沸き、まだそれは継続中だ。上記の調査は、昨年さらにリーディング・デバイスの爆発的普及の波があり、同時に従来型の本とアプリの間の動的コンテンツを実行するデバイスが登場するなかで行われたことに留意すべきだろう。

E-Bookの次の急成長が出版市場の拡大を生む

数百ページの本を読む習慣を持つ人(コア・リーダー)はもともと限られている。しかし、本の知識を必要とする人はその数倍はおり、今後は実用書を中心に、非コア・リーダー層のニーズに対応したショート・コンテンツが増加するだろう。日本で1980年代以降MOOKや「マンガ版…」が開拓されてきたようなものだ。欧米と異なり、コア・リーダーが少ない上にコンテンツの供給も少ない日本では、従来型の本に集中できる読書専用E-Readerの普及の波は経験していない。ショート・コンテンツの出版環境は徐々に整ってきたが、これには製作のインフラ(一種のプロダクトライン)を構築する必要がある。一品生産ではコストが数倍になり、安価であることを必須とする商品の性質に対応できないからだ。

非コア・リーダーの開拓は、おそらくグローバル市場を前提として進むだろう。海外市場戦略も必要となり、欧米の出版社は、それを意識して体制の構築を進める。E-Book(出版)の第2の急成長は、それによって可能になると考えられる。このショートコンテンツは、消費者の予算と時間のシェアをめぐってゲームやWebと、競争あるいは協調することになる。

コア・リーダーの維持拡大は、読書教育と図書館などの環境整備として地道に取り組むしかない。先進国では、この市場(セグメント)でのE-Book市場の成長は、最初は爆発的であったものから安定的なものに移行する期間は比較的短いと思われる。日本の問題は、コア・リーダー(知識層)のデジタル対応が進まないために、彼らがリードすべきショート・コンテンツの開拓も遅れていくことだろう。出版社の責任と役割は大きい。  (鎌田、01/19/2012)

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