取次との交渉決裂でアマゾンが5000点を販売停止 (♥)

アマゾンが2月23日、米国Independent Publishers Group (IPG)との契約更新交渉の決裂を受け、約5,000点あまりのIPG書籍のKindle版から購入ボタンを外す措置を取ったことが明らかになった。印刷本は対象となっておらず、E-BookもKindleストア以外では販売されている。かつて委託販売制をめぐって2010年に、マクミラン社に対して同様の措置を取ったものの、1週間で撤回したことを想起させるが、この先は不透明。他方で出版社の間にもアマゾン・ボイコットが起きている。この紛争は今年最大の焦点に浮上した。  [全文=会員]

出版社・取次との条件交渉は厳しさを増す

IPGは独立系出版社400あまりに対し取次業務を行う、米国の取次会社だが、アマゾンが契約更新に際して条件の変更を申し入れてきたために合意に至らず、契約切れで販売停止になったもの。詳細は明らかではないが、IPGによれば、B&Nなど他のストアでは問題になっていないものだという。価格決定権やマージンなどをめぐって、アマゾンが条件の変更を申し入れてきたと言われる。IPGのマーク・サコメルCEOはこれが出版社にとって著しく不利なものだと判断し、受入れを拒否した。出版社にはIPGを支持するよう要請している。

米国のE-Bookビジネスでは、出版社が直接オンラインストアと契約する場合もあれば、IPGのような取次会社に委託するケースもある。IPGは400社あまりの中小出版社をバックにストアと交渉するわけだが、今回5,000点あまりが一挙にKindleストアのリストから落ちてもアマゾンが妥協しなかったことは、この程度の顧客/タイトル数では十分な交渉力が持てないことを示している。IPGはアマゾンが「最大のタイトルを業界最低水準の価格で」というポリシーを優先する限り、妥協する可能性があるとみているが、ビッグネームのベストセラー作家のタイトルを擁していたマクミランの場合とは事情が違っている。

出版側のアマゾン・ボイコットは広がるか

アマゾンの販売方法は、「より多くのタイトルをより安く」というのが基本だが、それはアマゾン(Kindleプラットフォーム)の売上を最大化するためであって、条件は出版社によって一律ではない。カテゴリーは複雑で実績によって変更され、そのルールも見直される。出版社の認識・期待・利害とは一致しないことは起こる。それでも出版社(取次)がアマゾンを切れないのは、印刷本を含めた圧倒的販売力で、E-Bookのシェアは6割台、印刷本も3割台と推定されている。アマゾンと出版社/取次とはビジネスのスケール、最適化のポイントは同じではない。タフな交渉を続けるには、アマゾンの依存度を減らし、自社の販売力を強化するしかないということだ。

2月27日には、アスボーン(Usborne)とケイン・ミラー(Kane Miller)を所有する児童書出版のEDC(Educational Development Corporation)が、アマゾンとの関係を停止し、1500点あまりを引上げることを表明した(Publishers Weekly, 2/27)。2009年にケイン・ミラーの販売を停止したのに続くもので、EDCの年間売り上げの13%に相当するという。ランドール・ホワイト社長によると、これはアマゾンの小売業者圧迫、先週のIPG書籍販売打切り措置に対抗したものだという。EDCはミュージアム・ショップ、ギフトストアを通じて販売するほか、学校や図書館への直販営業も行っており、アマゾンなしでもやっていけると主張している。ケイン・ミラーの売上は、2009年以来33%向上しており、書店・小売店・直販を通じた販売に自信を持っていることも背景にあるようだ。

既成の出版業界とアマゾンとの軋轢は昨年にも増して強まっているが、アマゾンが注視しているのは業界よりも作家と消費者の動きであり、出版社も書店も、これが作家・消費者をめぐる競争であることを認識すべきだろう。 (鎌田、02/29/2012)

参考

Scroll Up