5年目迎え複雑さが見えてきた米国E-Book市場

米国で開催中のDigital Book Worldカンファレンスでは、次々と注目すべき調査の結果が発表されている。細部に目が行き届くようになった結果、これまでのように成長を続ける山の高さと大きさだけでなく、峰・尾根・谷・植生・地質などの山容が見えてくるようになった。E-Bookという山は、かなり複雑な形をしており、しかも急速な変化を止めていないのでアプローチは単純ではない。

E-Bookの普及はパワー・バイヤーが中心

もともと、本の市場は一様ではない。学校で義務的に読んでいた年齢を過ぎると、職業的に本から情報を得る必要がある人々、本に親しみ、楽しむ習慣のある人々を除けば、本は必需品ではない。米国では、月に4、5点は本を買う中核的読書層とカジュアルな(あまり本を読まない普通の)読者層に分けられる。E-Bookはまず前者の一部で急成長し、リーディング・デバイスの普及で後者にも浸透していった。将来は義務的な読書にも広がることが確実視されている。もう一つの視点はジャンルだ。フィクション、ノンフィクション、ビジネス、科学といった分野によって、コンテンツの特性、読者の性質はかなり違う。

米国バウカー社とBISGが最近行った調査では、裾野の拡がりが、期待より小さかったことが明らかにされた。本の購入者でE-Bookを買った人は2010年の9%から17%に増えたが、期待された25-30%のレベルには及ばなかった。ジャンルごとの違いは大きく、成年向けフィクションでは26%だが、児童書では11%、料理本では3%だ。74%はE-Bookをまったく購入したことがなく、その中にはE-Readerを持つ人も14%含まれている。

印刷本の場合、「パワー・バイヤー」が22%いて、印刷本の売上の53%が彼らによる。しかしE-Readerの場合は、パワーバイヤーが35%で、売上では60%を占める。最初にE-Bookを購入してから7~12ヵ月後に、パワー・バイヤーの72%が完全にデジタルに転換するという数字もある。しかし、印刷本のパワー・バイヤーへのE-Bookの普及は、2011年に至って減速傾向が見られた。ということは、このままでは急成長が止まる。出版界にとっての脅威は、カジュアルな読書層が、タブレットを手にしたことで本を読まなくなることだ、とレポートは指摘している。タブレットでは、ビデオやゲーム、Webブラウジングとユーザーの時間を争うことになるからである。

タブレットが生きるコンテンツはこれから

DBWがフォレスター・リサーチと共同で行った調査で、読書プラットフォームとしてのタブレットへの(出版界の)期待が1年前と比べて大きく減少していることが明らかにされた。間もなく1億台に届こうとするタブレットだが、書籍コンテンツの販売への貢献が小さいためだ(DBW, 01/30)。

市場シェアの計74%を占める有力出版社の関係者を対象とした最近の調査では、iPadその他のタブレットが理想的なリーディング・デバイスであると考えるのは、前年の46%から大きく減って31%となった。NookやKindle Fireのような「クロスオーバー・タブレット」も30%と変わらない。つまり、サイズの問題ではないということだ。とはいえ、Kindle Fireのオーナーを対象とした小規模な調査では、71%が読書を主な用途の一つと考えている一方で、iPadユーザーの調査では、本をダウンロードして読んだことのある人は53%に過ぎなかった。それに、デバイスの増加とコンテンツのDLの増加の相関はしだいに低下している。

しかし、タブレットはPCのような汎用性、メディア消費という指向性、コンテンツに特化した専用性が混在しており、E-Readerとは単純に比較できない。アップルがiBooksを進化させたように、動的・対話的なコンテンツはこれから大量に供給されるから、E-Bookが従来の出版市場の外側に大きな裾野を拡大するだろう。問題はそうしたコンテンツとマーケティングには、これまでの本とは違ったアプローチが必要になるということだ。 (鎌田、02/02/2012)

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