B&Nは(どうすれば)生き残ることができるか (♥)

B&Nのウィリアム・リンチCEOがNook事業の分離の可能性を語ったことで、この会社の周囲に暗雲がたちこめている。好調と思われていた成長事業が、じつは企業規模に比べて大きな赤字を継続的に生む熱すぎるビジネスであることが判明したためである。同じ問題はKoboも抱えているが、B&Nのほうがはるかに深刻だ。世界最大規模の書店であり、同時にアマゾンに次ぐシェアを保ち、急成長を続けるNookを持つB&Nの帰趨は、出版業界に大きな影響を与える。出版関係者からの前向きな提案が目立ち始めたので、いくつか紹介してみたい。[全文=会員]

フランチャイズ化と出版社との連携強化

American Editorブログのリッチ・エイディン氏は、多くの出版人と同様、B&Nがボーダーズの後を追って人々の記憶に残るだけの存在となることを怖れている。垂直統合での独占を完成させれば、アマゾンが「消費者の味方」政策を変えて自社利益優先に転ずる可能性は否定できないし、何よりも選択が働かない状態は気分が良くない。Nookで火傷しそうになったB&Nがそれを放棄すれば、電灯の登場以後の蝋燭屋のようになってしまうだろう。P-Bookは消えないとしても縮小は続き、メディアとしての機能を低下させる。

B&Nはどうすれば生き残れるか。エイディン氏はBarnes & Nobleブランドをフランチャイズし、地域密着の独自性を持たせ、クーポン付のE-Bookも店頭で販売するなどのアイデアを提案している。出版社と地域の書店の連携を強めるということだ。独立系書店にもネットワークを広げる。

DRMを外せばアマゾンの優位は消える!?

オライリーのジョー・ワイカート氏は、自身のPublishing 2020ブログで、B&Nの生き残りのための提言を述べている。かなり大胆だが、説得力がある。

  • 出版社を説得し、エコシステムの1社独占が可能になる世界の現実に目を向けさせる。以前の行動を続ければ先はない。
  • E-BookをEPUBだけではなくMobiフォーマットでも提供し、ユーザーがKindleでも読めるようにする。KindleユーザーがBN.comから購入できる。
  • 実質的にアマゾンの独占の武器となっているDRMを外してE-Bookを提供する。つまりユーザーをKindleから解放する。

現在の競争環境は、デバイスでもコンテンツでも、懐の大きい者、長い潜水に耐える者が勝つように出来ているというのはその通りだ。アマゾンやアップルは、これまでの常識に反して単独で市場を創造し、拡大させている。DRMは海賊からの防壁という以上に、アマゾンを競争者から護っているというのも事実だろう。チャールズ・ストロス氏が指摘しているように、出版社は自らを締め上げる道具をアマゾンに渡しているのだ。DRMがなければ、すべてのデバイスとプラットフォームの差異は無意味化する。海賊版対策はDRM以外の手段でやったほうが合理的だ。「損して得取る」という商売は有効でも、アマゾンのような閉鎖系でのシステムをコントロールする形では行われなくなる。

とはいえ、著作権神話とDRM信仰は、著作者と出版社を縛っている。巨大メディア企業はまだ自身がコンテンツの支配者であると考えており、アマゾンやアップルのようなメタ企業の前で無力であるとは考えていないからだ。それに、B&Nはますます愚かになっている。最近、同社はアマゾン出版物の書店販売ボイコットを続けることを表明したが、これなどは消費者よりアマゾンへの敵意を優先したものだ。アマゾンは、21世紀のルールに気づこうとしない競争相手に対して有利な戦いを続けている。   (鎌田、02/02/2012)

■参考記事

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