米国では図書館のE-Book貸出が急増する中、これに警戒的な大手出版社が貸出用電子コンテンツの販売を停止してきたが、ニューヨークで最近行われた米国図書館協会(ALA)の首脳とランダムハウス社(RH)との交渉がまとまり、価格引上げで合意に達した。つまり図書館向け価格を設けることでE-Bookの貸出を認めるという合理的・市場的な解決を見たことになる。RH社は図書館の活動への協力姿勢を強調している。
RHは、成年向けと児童向け、新刊本と既刊本の区別なく貸出を認めるとしている。ハーパーコリンズは回数制限、ペンギンとアシェットは対象書籍制限、マクミランとサイモン&シュスターが貸出禁止という3つの対応があるが、RHは大手出版社の中では最初にE-Book貸出を認めたことになる。価格引上げの理由について、同社のスポークスマンは「E-Bookは違う」とだけ述べ、価格については著作者への正当な報酬を保証できる水準をALA側と交渉していくとした。個人向けと法人向けに価格を分けることは学術誌などでは一般的に行われており、図書館側は電子貸出によるコスト低減効果があるので、ある程度のプレミア価格は容認できる。
それにしても、この程度の知恵に到達したのがRHだけだったとは情けない話だ。出版のエコシステムの底辺を支えてきた公共図書館が21世紀に生き残るにはE-Bookの貸出が不可欠であり、貸出をしないということは図書館の存在を否定することを意味する。出版社批判がさらに高まる前に、RHの決定に他の各社が追随することを期待したい。◆ (02/09/2012)
参考記事
- Fair Trade: Random House Will Raise Library E-book Prices, But Commits to E-Book Lending, By Andrew Albanese, Publishers Weekly, 02/02/2012