米国政府が5年以内に教科書の電子化とeラーニングシステムの導入を達成する目標を持っていることが2月1日、National Digital Learning Dayのミーティングで明らかにされた。教育省のアーネ・ダンカン長官と連邦通信委員会(FCC)のジュリアス・ゲナショウスキ議長が講演し、通信インフラの整備やフォーマットの標準化、デバイスの調達などの困難な問題を解決していく意思を明確にした。教育のIT化は韓国が先行しているが、米国も体制固めに動いている。
ダンカン長官は同日のスピーチで、技術革新が進む社会の中で教育だけが取り残されているとした上で、「内容の多くが時代遅れで、50~70ドルもする教科書を詰めた重いバックパックを背負わせて子供たちに通学させたいのか、それとも数年前には想像も出来なかった内容で常に更新される豊富なコンテンツを載せたモバイル・デバイスを持たせたいか。選択は単純だ。」と述べた。米国政府は、紙の教科書の電子化を超えたラーニングシステムを指向している。問題解決型、対話型、協調型、個別性といった現代の教育が必要とする「体験」を効果的・経済的に提供するには、E-Textと教育アプリによるしかないが、まだ方法は確立されていない。教育内容の改革に加えて教師と生徒の慣れの問題もあり、移行が容易でないためだ。
K-12の児童・生徒を対象とした教科書には約80億ドルが使われている。電子化すれば単純に印刷・製本・配布のコストが浮くが、全自動にデバイスを配布するには足りない。しかし、すでに数年間ならばバランスできるところまでは来ているし、タブレットの低価格化が進めば、数年以内には、現在の教育予算の範囲内でeラーニングの環境が整備できる。するとそこまでにコンテンツを整備し、ラーニングの方法を確立することが課題となる。80億ドル市場の動きは出版だけでなく、デジタル・プラットフォームにも大きな影響を与える。 ◆ (鎌田、02/09/2012)
*この日、教育・行政関係者のための指針として書かれたDigital Textbook Playbookが公開されたが、内容についてはいずれ紹介してみたい。