アマゾンが「Kindle独占」として出版するタイトルの印刷版を、B&NやBaMなどの大手や多くの独立系書店がボイコットしている問題で、アマゾン出版が新規にオープン・シリーズとして“Amazon Lives”を全フォーマットで提供する意向を表明したことで新しい展開が見えてきた。NY支社の出版活動が本格的に立ち上がる今秋を前に、アマゾンは環境整備に動いていると見られる。そもそもこれは宣伝戦・心理戦と考えたほうがいい。もともと書店がアマゾンのE-Bookを販売したいと本気で考えていたわけではないからだ。 [全文=♥会員]
オープン化、ボイコット問題、フォーマット
“Amazon Lives”は、2013年6月から発売を計画している、シングル・フォーマット(25000-40000語)の伝記シリーズで、Kindleのほかホートン・ミフロン・ハーコート社(HMH)のAmazon Publishingシリーズとして提供される。E-BookはKindle独占ではなく、すべてのオンライン書店、フォーマットに対応する。問題は、アマゾンが全タイトルのオープン化につながるのかどうかだ。大物出版人であるラリー・カーシュバウム氏(写真)が契約し、今秋に発売するティム・フェリス、ディーパック・チョプラ、ペニー・マーシャル、ジェームズ・フランコのような著名人のタイトルがNookやKoboでも読めるようになるのかどうか。公式な発表はないが、PaidContent (3/2)によれば、答はおそらくイエス。
もしイエスとした場合、E-Bookが提供されないことを大義名分にしたアマゾン出版ボイコットはどうなるだろうか。アマゾンが「業界」にとって好ましからざる商売敵であることを理由に続けるか、それともアマゾンへの「勝利」を宣言して終わらせるか。常識的には後者だろう。企業間の競争に消費者を巻き込んで得るものはなく、失うものは大きいからだ。そもそも「ボイコット」は必ずしも徹底されておらず、HMS/AmazonのタイトルはB&Nのストアから一掃されたわけではない。つまり本気度は低い。ベストセラー著者を含むアマゾン出版のタイトルは、今秋の大きな話題となるだろう。今回のトラブルは、双方にとって計算された宣伝戦である可能性が高い。
アマゾン出版がオープンにするという場合、B&NやKoboがサポートするEPUBフォーマットで提供されることを意味する。ともにHTML5/CSSをベースとするKindle FormatとEPUBの差は非常に小さいので、この乗り入れは、固定レイアウトなど標準化されていない部分の共通化につながる可能性が高い。これはEPUBにとっても望ましい方向への新たな一歩となる。 ◆ (03/08/2012)