バウカー社Global Monitorの調査結果は衝撃的

ニューヨークで今週開催されたPublishing Business Expo & Conference 2012で、バウカー社のケリー・ギャレガー副社長が講演し(→スライド)、最新の世界(10ヵ国)市場動向をフォローするGlobal eBook Monitorに基づく発表を行った。単なる市場規模ではなく、読書習慣にフォーカスした国際比較により、その市場の特徴が明らかになる。成熟に向かいつつある米英を中心に、知識欲が旺盛な新興国、デジタル・リーディングに無関心な日仏の対比が鮮明になった。とくに日本の無関心は世界的にみて特異だ。これを紙の本が潤沢なせいと考える人はいるだろうか。(以下Digital Readerなどによる)

知識欲旺盛な新興国に比べ、日仏はいまだ夜明け前

バウカー社のMonitorは、今年初めオンラインで、成人のインターネット利用者を対象に実施され、米国、英国のほか、フランス、ドイツ、スペイン、オーストラリア、ブラジル、インド、韓国、日本の10ヵ国をカバーしている。E-Bookの購入傾向はGDPとは無関係で、過去半年間に購入したと答えたのは、フランスが最も低く(5%)、日本がそれに次ぎ(8%)、逆にインドが最高(24%)、英国(21%)、米国(20%)がほぼ並んでいる。フランスと日本だけが一桁というのは興味深い数字だ。韓国は14%で日本の2倍近い。日仏が最もデジタル・リーディングからかけ離れているということになる。

バウカー社は無償コンテンツのダウンロードについても聞いているが、ここでも日仏が11%で最低となっている。最高はインドの53%で、ブラジル(47%)、韓国(42%)と続き、米国は25%と中位だ。バウカーは、無償コンテンツが新興国市場の拡大に貢献していると結論づけている。

インドのネット人口の24%は、人口の2%以下に過ぎないが、それでも英国の17%に相当する。人口の大きい新興国市場は、今後のE-Bookの世界市場で比重を増していくことを意味している。この指摘は重要だ。バウカーは「購入意欲」を聞いて市場の潜在性を評価しているが、「買うつもり」「たぶん買う」を合わせた割合では、ブラジルが58% (29+29)、インドが54% (23+31)、韓国が41% (18+23)で、フランスは18% (6+12)、日本は最低の13% (4+9)だ。ちなみに米国は30% (16+14)。

無償ダウンロードに関する意向を聞いても国別の傾向は同じで、日本は最低の21% (6+15)だ。どうやら日本はかなり特異な存在にランクされている。無関心率に至っては、日本が72%でトップ、フランスが66%で追っている。しかし、世界最大の市場である米国も59%で、E-Book読書人口が飽和状態に近づきつつあることを示している。分野別では、フィクションが先進国で高く、新興国では教育・ビジネスコンテンツが高い。

リーディング・デバイスに関する項目も興味深い。米国ではE-Readerが36%、タブレットが29%で、PCは23%としだいに影を薄くしているのに対して、日本ではなおPCが59%(新興国並み)で、専用E-Readerはなんと1%、タブレットも12%に過ぎない。スマートフォンは20%。「その他」の7%はガラケーのことか。ちなみにフランスはタブレットが28%、E-Readerが12%。E-Bookを購入するサービスでは、アマゾンKindleが米国で61%と圧倒的な強さを示し、B&N (13%)、アップル(7%)は周回以上の遅れ。日本ではアップルが19%、出版社の直販が16%だが、日本語でKindleコンテンツがまだ販売されていないのに13%を占めている。専用E-Readerが1%ということと合わせて考えると、日本のKindleユーザーが英語コンテンツを活発に利用しているということを示しているのかもしれない。新興国ではアマゾンがまだ進出していないこともあって、購入元も多様だ。

この調査では典型的E-Book読者のプロファイルを各国別に要約しているが、日本の項を見ると、男性中心(62%)、25-34歳(35%)、大卒・サラリーマン中心。これはデバイスの保有とも関係しているだろう。バウカー社は、テクノロジーやインターネットへのアクセスは必ずしもE-Bookの普及とは結びつかないとして、フランスと日本を例に挙げている。その理由については述べていないが、両国に共通するのは、デジタルコンテンツに対する出版界の姿勢が厳しく、印刷物優先の方針を堅持していること以外には考えにくいだろう。  (鎌田、03/22/2012)

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