ジェームズ・ボンドの北米出版権をアマゾンが取得

出版社にとって、毎年の売上が見込める定番商品ほどありがたいものはないのだが、誰でも売れるタイトルはオンライン書店のターゲットでもある。故人の財団が管理するイアン・フレミングの『ジェームズ・ボンド』シリーズの北米での版権(紙とデジタル)が、アマゾン出版 (Thomas & Mercer)の手に渡ったことが明らかになった(→4月17日付リリース)。期間は10年間で14点が対象となる。このことの意味は小さくない。

ボンド・シリーズは、地域別に出版権が分かれており、英国では2010年にペンギンが版権を更新した。「その他世界」の権利(ボンド14点ほか2点)はランダムハウスのヴィンテージ・ブックスが先月取得したが、これには米国とカナダが含まれていなかった。4月18日にアマゾンから発表された内容によると、同社はこれまで保有してきた電子版の権利を更新できただけでなく、新たに印刷版権も取得した。

業界ではこのビッグブランドの権利取得が、アマゾンにとって“象徴的な勝利”ではあるが、もともと北米での販売実績は(映画に比べて)さほど大きくなかったので、金銭的な意味は小さいと評されている。しかしこうした見方はやや皮相に過ぎるのではないか。第1に、アマゾン出版の「格」を上げるだけでなく、ボンド・コミュニティ、スパイ・冒険小説ファン層にアクセスし、開拓する上で有利な地歩を確保した。第2に、アマゾンは映像コンテンツを含めた北米のボンド市場をさらに拡大することができる。第3に、書店の間に一時広がったアマゾン出版ボイコットの火を消す効果もあるだろう。書店が「ボンド」のボイコットまではやれば消費者のボイコットを誘発する。

大手出版社が出せない金額で紙とデジタルの版権を独占したのは、やはり十分な目算があってのことと考えたほうが良い。アマゾンは十分なデータとマーケティングのメカニズムを持っている。次の問題は、これをいくらで売るか、印刷版の製本・装丁をどうするということだ。  (鎌田、04/19/2012)

Scroll Up