アマゾンAudible.comのボーナス印税は歴史の必然か (♥)

アマゾンは毎週のように新しいマーケティング手法を繰り出してくる。今度は傘下のオーディオブック・ストアAudible.comが、ソーシャルネットワーク・サービスであるAudible Author Services (AAS)に同意した作家に対し、一点あたり(通常の印税に上乗せして)1ドルを支払うというプランを発表した。しかし、出版社の頭越しに著者に「ボーナス印税」を払うというものだけに、当然にも物議を醸さずにはおかなかった。信頼関係は文化の問題だが、下部構造が変化した以上、やはり文化も変わらざるを得ない。 [全文=会員]

出版ビジネスのプレイヤーには努力と成績証明が求められる

このプランは、Audible.comを通じて販売しているコンテンツを持っている著作者に対して提供される。AASは著者がそのオーディオブックをプロモーションするのに使うことができるシステムサービスだが、これを使ってくれる著者には、1点売れるごとに1ドルが追加で入ってくる。もちろん「アマゾンで買って」と言ってくれることを期待している。ブルームズベリー出版のリチャード・チャーキン専務取締役は、これは出版社と著者の信頼関係を損なう、として不快感を示した。彼はまた著者エージェンシーが2年ごとの印税率の評価レポートを求めてくるなど、著者側が出版社を信頼せず、世知辛くなった現状を嘆いてもいる。

Audible.comのドナルド・カッツCEOは、これに真っ向から反論し、著者は出版における仲介者(出版社と販売者)に権利を委ね、潜在的な収入を最大化することを期待しているのであって、重要なのは著者と読者だと述べている。「信頼関係」は最大限の販売努力への期待に基づくもので、白紙委任ではないということだ。二人の見解の相違は、出版ビジネスの性格がデジタル・パラダイムによって根本的に変わったことを抜きには理解できない。気の毒だが、チャーキン氏の時代は去ったのである。新しいマーケティングの方法が世間に知られるようになった以上、著者(とその代理人)は、より多くの収入を求めるし、そのための努力とパフォーマンスで評価しようとする。かつて「信頼」は互恵を意味すると考えられていたが、著者側は出版社のマーケティング能力を疑うようになった。

信頼も文化の一部であると考えれば、著者が出版社に白紙委任を与える習慣は「出版文化」を代表するものであった。しかしマルクスではないが文化もやはり「生産関係」と無関係ではない。かつて出版市場は(取次や書店が黒子となり)もっぱら出版社と消費者の間に存在するものと考えられてきたのだが、生産関係がデジタルによって単純化した結果、版権を売る著者とコンテンツを買う消費者の間に存在するものとなり、出版社も取次も書店も、すべてはそのどちらか(あるいは両方)に評価される対象となっている。著者がデータを求めるのは当然だ。データも提供できないで21世紀の出版ビジネスに生き残ることは難しいだろう。参入障壁の解消によって、ますます厳しい競争にさらされているのは著者なのだから。  (鎌田、04/19/2012)

Scroll Up