旅行ガイドに見る紙とデジタルの関係

旅行ガイドは、最もデジタル化が相応しいと考えられているジャンルの一つだ。最新情報の更新、各種サービスへのリンクなど、理由には事欠かない。米国の旅行書市場も印刷本の減り方が急だ。しかし、News Tribuneの記事(5/3)によれば、重くてもかさばっても、旅行には紙のガイドを持っていったほうが良いという。現場で「使う本」としての性格が強いガイドブックは、かなり独特なユーザビリティが要求されるが、その点でモバイル・ガイドはまだ成熟には遠い。

欧米では、ほとんどの旅行ガイドは専門出版社から出ており、その数は非常に多い。それぞれ執筆、編集、デザインの流儀が違うので、読者の好みが分かれるからだ。これらの多くはすでにE-Bookを発行している。出版データを記録しているNielsen BookScanでは、Travel Publishing Year Bookを出しているが、過去6年間に印刷本は28%と大きく落ち込んだ。また出版市場の専門家であるフォーダム大学のアルバート・グレコ教授によれば、2008-11年の3年間だけで、1億9,030万ドルから1億4,900万ドルに減少している。Frommer’sを保有するジョン・ワイリー社は、すでに売却を決めている。市場の縮小による淘汰が生じているのかもしれない。しかし、グレコ教授は、紙が徐々に減り続けるとしても、消滅するとは見ていない。米国では、昨年4,221点の印刷本と711点のE-Bookの旅行書が販売されていた(Bowker)。まだE-Bookは2割にも届いていない。

モバイル・ガイド(+ツール)の問題点としては、

  • ページをすばやく繰ることができ、元に戻れる紙に比べて、「使い勝手」が落ちる。
  • 旅先では、とくに落下や圧迫による破損や故障の心配があり、紙ほど気安く使えない。
  • 昼間の屋外使用では、カラー液晶スクリーンが反射して視認性が悪くなる。
  • タブレットとスマートフォンのそれぞれに最適なUIがまだ成熟していない。
  • ユーザーの多様性に対応していない。

といったことがある。部屋で読んだりチェックしたりするにはデジタルでもよいが、持ち歩いて「操作」するには、本来的にモバイルな冊子本の便利さが残るということになるだろう。タブレットは「旅行用コンピュータ」として、PCを代替するための機能と操作性を持っており、いずれ持っていくのが一般的になる。それと共存するには、紙のガイドはより携帯性を重視したものとなるかもしれない。  (05/03/2012)

Scroll Up