米国BISGがメタデータ利用の現状をレポート (♥)

米国出版産業のシンクタンクであるBISG (Book Industry Study Group)は、メタデータに関するレポートを発表し、出版社、サービスプロバイダー、卸売業者、小売業者、メーカーのいずれもが現状の標準に満足しておらず、ONIX 2.1のコアエレメントに39の新要素を追加することを求めていることを明らかにした。メタデータは、ネット上のコンテンツの「見つかりやすさ」を求める今日のマーケティングに不可欠なものとして、業界全体の関心を集めている。このレポートは、新規要素へのニーズが増大していることを示しているが、ONIXの有効性に疑問も生じている。(全文=会員)

ネットの世界で、メタデータは本の表紙、書架の配列

調査を監修したデジタル出版コンサルティング会社、マジェラン・メディア社のブライアン・オリアリー氏は、「われわれ―出版社はとくにだが、卸・小売企業も―が切実に必要としているのは、人が本を見つけ、評価し、購入するプロセスを支援するものだ。」と述べている。しかしBISGのレン・ヴラホス事務局長が指摘するように「ONIXのメタデータは多すぎて、出版社は十分に活用・更新ができておらず、小売業者も必ずしもすべてを表示していない」のが現状だ。Digital Book Worldのジェレミー・グリーンフィールド氏は(6/11)、一例として、ある小説がシリーズ3作目で、1作目は映画化もされ、SF雑誌の読者表彰を受け、雑誌やWebでベストテンに選出され…といった販促上重要なポイントが本の販売サイトではほとんど欠けている、といった事例を挙げている。

北米の出版社は現在、ONIX 2.1を使っているが、出版社は参考要素としてマニュアルで任意の文字列を入力することが出来るが、検索できない。卸や小売業者もこうしたメタデータを入力できるが、一貫性が失われ、ほとんどの出版社も改変を望まない。書店で勝手に表紙を付け替えたようなものと感じるのも無理はない。出版関係者が望むメタデータ要素の一部は次世代標準のONIX 3.0に採用されているが、たんに要素を追加しただけでは問題は解決しないだろう。

メタデータとは、あるデータに関する情報を持ったデータのことである。奥付に記載される著者、発行日、標題などが代表的なものだが、印刷本の場合には書店や図書館で手にとって見ることを前提にしており、図書カードも作成作業の効率を重視して作られているので、テーマについて勘が働かせられるほどのエキスパートでないと使いこなせない。検索を前提にしたインターネット書店ではほとんど役に立たない。Web画面に表示可能な情報と表示方法はどんどん進化しているから、リテイラーによって大きな格差が生じ、拡大している。結果から見る限り、アマゾンしか有効に使えていないということだ。

ITで広がるマーケティング力の格差

オンライン・データ(の扱い)が販売の鍵を握るようになった米国で、メタデータへの出版社の関心が高まったのはここ2年ほど。しかし、アマゾンやB&Nなどはそれ以前から独自のメタデータを使い、更新してきた。メタデータ設定の主導権は完全に小売側に握られていて、出版社側が衝撃を受けているというのが現状だ。小売側で入れたデータには誤りもあり、出版社から見て不適当と思われるものもあるようだが、訂正を求めるほどの知識(データ・リテラシーと言ってよいだろう)を持っていない。

メタデータの標準化と出版社サイドでの普及(活用)は、出版社がオンライン世界で主導権を失わないようにするための重要な手段だ。しかし、ITの世界はすでにビッグデータ(構造化データ、半構造化データ、非構造化データ)の時代に入っており、コンテンツの全文はもとより、読者プロファイル、検索履歴まで効果的に駆使して、マーケティングを展開するようになっている。アマゾンはそちらのチャンピオンでもあるので、格差はますます広がる可能性が強い。出版社あるいは出版業界として、創造的競争が可能となるような標準とその運用のロードマップが必要な時期に来ていると思われる。  (鎌田、06/14/2012)

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