アマゾンのKindle Owners’ Lending Library (KOLL)は6月19日、『ハリー・ポッター』7巻の電子版の提供を開始したことを発表した。これにより、 Amazon Prime (AP)会員は、英語版のほか、仏・伊・独・西の4ヵ国語版を月1点、無償で借り出して読むことができる。Pottermore.comから発売されたのはつい3月で、5月にはKOLLからの提供が予告されていた。このメージャー・コンテンツは早くもアマゾンの看板になった。
すべてAmazon Prime会員増加のために
『ハリー・ポッター』は数日で公共図書館の貸出記録を更新したほど人気が高い。アマゾンとPottermore.comの契約の詳細は不明だが、DL数に応じた利用料がアマゾンから支払われることになる。人気タイトルだけに、金額も相当なものとなろう。月に100万ドルを超えたとしても不思議ではない。人気商品の無料貸出などという“芸当”はこの会社にしか出来ず。ライバルは苦戦を強いられる。
2005年にスタートしたAPは、年間約80ドルで通販商品の無料配送やネットビデオの無料貸出(米国限定)などの特典が利用できるもの。Kindle向けのライブラリは昨年後半から導入された。特典による会員の囲い込みは「去る者は日々に疎し」の宿命を負うネット通販ビジネスの収益性を支える日常的な利用顧客の確保という役割を担っている。AP会員は、一般顧客より3~5倍も多く購入し、しかもサイトでの購入決定も早いという、有難い存在だが、増加のテンポはかなり緩いと考えられている。
AP会員数は公表されていないので、推定にはかなりの幅がある。ブルームバーグによれば、昨年10月時点で推定会員は500万人で、これを来年前半までに700~1,000万人に引上げるのがアマゾンのターゲットであるというが、J.P.モルガンは1,300万人と見ている。昨年11月のKindle Fireの導入時には、お試し会員特典を無料で付けたが、推定500万ほどのトライアル会員の何割が正規の有料会員に変換されたかは憶測の域を出ない。デバイスとコンテンツの両面でキャンペーンを継続し、APを増やすことが最大の課題ということなのだろう。 ◆ (鎌田、06/21/2012)